アイスブレーカー MERINO 150 LS を夏山で徹底テスト
この記事でわかること(結論とざっくり評価)
– 「3日着ても臭わない」は概ね本当です。連続使用でも化学繊維よりニオイが出にくく、テント場や山小屋で気まずくなることはほとんどありませんでした。メリノウールには細菌の増殖を抑える特性があり、同条件で化繊を着たときよりニオイの出方が明らかに遅いと感じました。
– 汗の乾きはシーンによっては化繊に劣るものの、行動中に困るほどではなく、汗冷えも抑えられます。総合評価としては「夏の縦走向けベースレイヤーとして高評価」です。ただし、速乾重視の高強度トレイルランニングなどには不向きです。連泊縦走で「着替えの枚数を減らしたい」という観点では、MERINO 150のバランスはかなり優秀です。
– 向いている人:テント泊や山小屋縦走で荷物を減らしたい人、日常から山まで1枚で使いたい人。向いていない人:とにかく速乾最優先のレース志向の人、ウェアを荒く扱いがちな人です。丁寧に洗濯し、ザック擦れに気をつけながら使える人ほど、「高いけれど買ってよかった」と感じやすいアイテムです。
アイスブレーカー MERINO 150 LS はどんなベースレイヤー?
製品概要とスペック
MERINO 150は「150g/m²」クラスのライトウェイトメリノウールを使用したベースレイヤーです。素材はメリノウール主体で、ナイロン芯にウールを巻きつけたコアスパン構造を採用し、耐久性と伸縮性を両立しています。
モデルによっては、素材構成が「83%メリノウール/12%ナイロン/5%ポリウレタン」で、鹿の子やメッシュなど部位ごとに編地を変えた「ボディマップ」仕様の ZoneKnit 版もあります。サイズにより重さは異なりますが、M〜Lサイズで約250〜290gほどです。
フィット感はややタイト寄りで、ボディマップ設計により動きやすさを重視したつくりです。ベースレイヤーとしては公称価格13,000〜15,000円前後と高価な部類ですが、薄手ながらしっかりした生地感と仕立てで、街着としても違和感のない見た目を備えています。
なぜ登山者に人気なのか
メリノウールは天然素材ならではの調温性・防臭性を持ち、汗臭の原因となるバクテリアの増殖を抑えるため、連続着用に強いのが最大の魅力です。汗をかいても繊維内部へ水分を吸い込みつつ、表面は比較的サラッとした状態を保ちやすいため、「ベタつきにくい・冷えにくい」という快適な着心地につながります。
アイスブレーカーは MERINO 150 のほかに 200 や 260 など、厚みの異なるラインナップを揃えていて、150は主に夏〜春秋の行動着に最適です。200/260はより保温寄りで、夏の縦走なら150でほとんどのシーンをカバーできます。寒がりな方が春秋や残雪期まで視野に入れるなら、「150+200」の2枚体制が現実的な落としどころです。
他社(モンベル、スマートウール、Goldwinなど)もメリノベースレイヤーを展開していますが、フィット感や厚み、価格帯に違いがあります。アイスブレーカーはやや高価ながら、素材感の良さとブランドへの信頼感で差別化している印象です。ニュージーランド産メリノへのこだわりやサステナビリティの打ち出し方も含め、「メリノといえばまずアイスブレーカーを検討する」というポジションを確立しています。
テスト環境:真夏の北アルプス某山域 2泊3日縦走で検証
行程と気象条件
標高差2,000〜2,800mの縦走で、1日あたりの行動時間は6〜8時間ほど。登り主体で発汗量は多めの行程でした。気温は麓で約28℃、稜線で10〜15℃ほど。朝晩は湿度高め、日中は晴れて直射日光があり、稜線ではそこそこ風があるという、典型的な夏山条件です。
低地では暑く、稜線では少し肌寒いという、ウェア選びに迷いやすいコンディションでしたが、MERINO 150 の調温性を確かめるには好条件でした。
着用条件と装備構成
ベースレイヤーとして MERINO 150 LS を1枚着用し、行動中は薄手のウィンドシェルと軽量レインジャケットを状況に応じて重ねました。夜は中間着として薄手のフリースを追加しています。
現地では洗濯を行わず、3日間「着っぱなし」でテストしました。替えのシャツは持たず、夜間はテント内で軽く乾燥させるのみです。バックパックは30〜40Lクラスで、肩周りには一定の擦れが発生する状況でした。汗・摩耗・温度変化といった、ベースレイヤーの性能が出やすい条件下での検証となりました。
3日間「着っぱなし」チャレンジの結果
1日目:発汗量が多い登りでの着用感
着始めはややしっとりとした感触はあるものの、ベタつきは少なく、肌触りも柔らかく感じました。急登で大量に汗をかいても表面は比較的早く乾き、休憩時の不快感は化繊ベースレイヤーよりも少ない印象です。
ザックを下ろして風に当たった際も、「一気に冷える」というよりは、じわっと体温が落ち着いていく感覚で、汗冷え特有のゾクッとした寒さは出にくいと感じました。
2日目:連日の汗でもニオイはどうか
2日目の朝の時点では、ほとんどニオイは気になりませんでした。自分で嗅いでも気になるレベルではなく、日中のムレ感も限定的で、周囲に不快感を与えるほどではありません。山小屋で横の人から指摘されることもなく、快適性は引き続き高い状態でした。
テント内でベースレイヤーを脱いで乾かしているときも、化繊でありがちな「ムワッ」とした汗臭さが立ち上る感じはほとんどなく、テント内の快適度は高かったです。
3日目:さすがに限界?実際のニオイレベル
3日目になると、脇周りや首元にわずかに汗のニオイが出始めましたが、化繊1枚で3日間過ごしたときに比べると明らかに弱いレベルでした。自分ではわかるものの、他人に指摘されるほど強いニオイではありません。
総じて、「3日着ても臭わない」という評判は、実感としてほぼ正しいと感じます。ただし、体質や発汗量によって個人差は出そうです。特にワキや背中など汗が集中する部位は、ザックの締め方や通気性によって差が出るため、気になる人は速乾タオルでこまめに拭く、夜だけ着替えるといった工夫をするとより安心です。
夏登山で感じたメリット
汗の乾きと「汗冷え」のバランス
行動中、風がある場面では非常に速く乾き、汗冷えはかなり抑えられました。風が弱く停滞しているときは、完全に乾くスピードが化繊より遅く感じる場面もありますが、稜線で風にさらされても、ウールの調温性のおかげで不快な冷えは少なかったです。
「完全に乾くまでのスピード」そのものでは化繊に軍配が上がりますが、「まだ少し湿っていても冷えにくい」という点はメリノウールの強みです。行動と休憩を繰り返す縦走スタイルとの相性はかなり良好だと感じました。
防臭性能のリアルな印象
3日連続で使用しても、周囲に気を使うレベルのニオイにはなりませんでした。テント泊での着回し効果は高く、日帰り山行であれば、数日分の連続使用も十分現実的な印象です。
特に、山小屋やテント場、下山後のバス移動など、「近距離で人が密集するシーン」でストレスが少ないのは大きなメリットです。替えのシャツを減らしても精神的な負担が増えにくく、長期山行の快適さに直結します。
着心地・肌ざわり・暑さのバランス
肌触りは柔らかく、多くの人にとってチクチク感は少ないと思われます(ただし敏感肌の方は事前に確認したほうが安心です)。直射日光下ではやや暑さを感じるものの、行動中の発汗によってバランスが取れるため、総合的な着心地は良好でした。
パターンはタイトフィット寄りで、動きにしっかり追従してくれるため、ザックを背負っても生地が余ってシワになりにくい点も好印象です。デザインも街着として違和感がなく、登山前後の移動や旅先でもそのまま着続けられる汎用性があります。
ここはイマイチだった・気になった点
耐久性と生地の薄さ
ザックの肩ベルトや行動中の擦れによって、肩周りなどに毛羽立ちが出やすく、岩場でのひっかけにも注意が必要です。長期的には生地が薄くなり、穴が開く可能性もあります。
コアスパン構造により、従来の純粋なメリノウールよりは耐久性が向上していますが、それでも化繊100%のベースレイヤーと比べるとタフさでは劣ります。特に岩稜帯での胸・腹部の擦れや、洗濯時にネットを使わないなどの扱いが重なると、寿命を縮めてしまいやすい印象です。
乾きの「スピード感」は化繊に劣る
テント泊で夜にしっかり濡れてしまった場合、気温や湿度によっては翌朝までに完全に乾ききらないことがあります。連日雨やガスに包まれるようなコンディションでは、化繊ほどの速乾性がないことを実感するシーンもありました。
そういった場合は、シュラフの中で体温を使って乾かす、翌朝の陽射しや風を最大限活用するなど、少し工夫が必要になります。一方で、下山後の宿や自宅での洗濯・乾燥では特別な不都合はなく、一般的なメリノウールとして想定内の速さです。
価格に見合う価値はあるか
実売価格が1万3,000〜1万5,000円前後と高価ではあるものの、「枚数を減らせる」「防臭による快適さを優先したい」といったニーズに対してはコストパフォーマンスは良好だと感じます。初心者が最初の1枚として選ぶにも十分おすすめできますが、耐久性を最優先するなら、安価な化繊ベースレイヤーを併用する選択肢もあります。
例えば、「夏のアルプス縦走では MERINO 150」「日帰りや雨予報の日は安価な化繊」といった使い分けをすると、トータルの出費とウェアの寿命のバランスが取りやすくなります。
サイズ選びとフィット感のポイント
身長・体重別のサイズ感の目安
細身の体型の方は、ジャストサイズを選ぶと二の腕や胴回りにしっかりフィットします。がっしりした体型の方は、ワンサイズ上げて動きやすさを確保したほうが快適な場合もあります。レイヤリング前提なら、ベースレイヤーはややタイト目のほうが有利です。
サイズチャートを見ると、肩幅や身幅はやや細身寄りの欧米フィットで、日本ブランドの同サイズよりタイトに感じるケースもあります。オンライン購入の場合は、普段の日本ブランドのサイズよりワンサイズ上を基準にしつつ、胸囲・肩幅をよく確認して選ぶのがおすすめです。
レイヤリング前提での選び方
夏山ではベースレイヤー1枚で行動し、夜は薄手のフリースや軽量ダウンを追加する使い方が一般的です。春秋は MERINO 200 を1枚足すか、150の上にフリースを重ねるといった組み合わせが効率的です。
春秋の低山〜残雪期まで視野に入れる場合は、「150+フリース」よりも「150+200」のほうが、汗処理と保温のバランスが良い場面もあります。いずれの場合も、ベースレイヤーは身体に沿うサイズを選んでおくと、その上に重ねるアイテムの選択肢が広がり、レイヤリングの自由度が高まります。
他モデル・他ブランドとの比較
Icebreaker 200・260 との比較
MERINO 200 は涼しい春秋向け、260 は真冬や停滞時の保温に適しています。夏の縦走なら150でほとんどのシーンをカバーできますが、夜間の冷えが強い行程では200を検討してもよいでしょう。
200/260はいずれも生地が厚くなるぶん、汗抜けや乾きの速さは150より低下しますが、その代わり保温力と「冷えにくい安心感」は大きく向上します。寒がりな方が夏のアルプステント泊をする場合は、「行動時は150、テント場や稜線での停滞・ビバークは200または260」と使い分ける構成が理想的です。
化繊ベースレイヤーとの比較
化繊ベースレイヤーは乾きが非常に速く、価格も安い一方で、防臭性の点ではメリノウールに大きく劣ります。夏のアルプス縦走で荷物を軽くしつつ、連泊で着回したいなら、メリノウールが有利です。逆に、短時間でこまめに洗って乾かせる環境があるなら、化繊も有力な選択肢になります。
例えば、テン場に水場と干し場があり、毎日しっかり洗って乾かせるなら、化繊の速乾性は大きなメリットになります。一方で、「洗わずに数日着続ける」「夜もそのままシュラフに入る」といった使い方では、化繊はニオイやベタつきが気になりやすく、MERINO 150 の快適性が際立ちます。
他社メリノとの違い
モンベルやスマートウールなど他社のメリノベースレイヤーは、フィット感や編み方、価格設定に違いがあります。アイスブレーカーは、素材の柔らかさとブランド全体の統一感が特徴的です。耐久性はどのブランドでも個体差や扱い方によるところが大きく、丁寧に扱うことが重要です。
モンベルは国内ブランドらしく価格が抑えめで、サイズ感も日本人に合わせやすい一方、デザイン性や「着ていて気分が上がる」といった部分では、アイスブレーカーに魅力を感じる人も多いと思います。スマートウールはよりスポーティなフィット感で、トレイルランニング寄りの使い方に好まれる傾向があります。
どんな登山者に MERINO 150 LS を勧めたいか
向いている登山スタイル・シーン
夏のアルプス縦走、テント泊や山小屋泊で荷物を減らしたい人、街着も兼ねて使いたい人に特におすすめです。
「2〜3泊の山行を1枚で乗り切りたい」「山行前後の移動で着替えなくてもサマになるベースレイヤーが欲しい」といったニーズには、かなりマッチします。自転車旅やバックパッカー旅行など、長期間の旅との相性も良好です。
向いていないかもしれないケース
短時間で何度も濡れては乾かすようなレース型のトレイルランニングや、とにかく価格重視の方、ザックによる摩耗が激しい使い方を想定している方にはあまり向きません。
「ガシガシ雑に扱っても気にならないウェア」が欲しい場合は、安価な化繊ベースレイヤーのほうがストレスなく使いやすいはずです。
実際に使うならこう着る:おすすめレイヤリング例
夏の縦走(標高2,000〜3,000m)想定
- 行動中:MERINO 150 LS + 薄手ソフトシェル(風の強い稜線用)+ 軽量ハードシェル(雨用)
- 夕方・夜:MERINO 150 LS + 中厚フリースまたは軽量ダウン
フリースはグリッド系など通気性の高いタイプを選ぶと、メリノの調湿性を活かしやすくなります。ダウンはあくまで停滞・就寝用と割り切り、行動時は「MERINO 150 + ウィンドシェル」を基本に温度調整するのが無難です。
春秋の低山〜残雪期への転用
- 日中行動:MERINO 150 + 中間レイヤー(MERINO 200 または薄手フリース)
- 停滞時・寒い時間帯:上記に 260 相当の保温着を追加
次に買い足す1枚としては、季節をまたいで使いやすい MERINO 200 が扱いやすい選択肢です。MERINO 150 をベースに、「200 か薄手フリースを足す」「アウターはソフトシェルかレインウェアを状況に応じて使い分ける」といった構成で、春先〜晩秋までかなり広い範囲をカバーできます。
冬山ではあくまでベースレイヤーとして位置づけ、より厚手の中間着と防風性の高いアウターを組み合わせる前提で考えると安心です。
まとめ:北アルプス3日間テストで見えた MERINO 150 LS の実力
夏の北アルプスで「洗わず3日着っぱなし」という前提で試してみた結果、MERINO 150 LS は評判どおり、防臭性と着心地に優れたベースレイヤーだと感じました。化繊より乾きが遅い場面はあるものの、「まだ少し湿っていても冷えにくい」「ニオイが出にくい」といった点が、連泊の縦走では大きな安心感につながります。
一方で、生地は薄めで擦れに弱く、価格も安くはありません。ザックや岩場との摩耗が多い人、ウェアの扱いが荒めの人には向きにくい側面もあります。速乾性だけを求めるなら化繊、耐久性と価格重視なら安価なベースレイヤーという選択肢も依然として有力です。
「荷物を減らしてもニオイや汗冷えのストレスを抑えたい」「山でも街でも違和感なく着たい」という登山者にとって、MERINO 150 LS は頼りになる1枚になりやすいと感じました。自分の山行スタイルや発汗量、予算と相談しながら、「化繊とどう組み合わせるか」「どの季節にメインで使うか」をイメージして選ぶと、後悔の少ない買い物になるはずです。