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ソフトシェルの正解。Rab「VR Summit Jacket」のヌケ感は、日本の蒸し暑い雪山ハイクにジャストフィットした。

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目次

「日本の雪山は、とにかく蒸し暑い」問題とVR Summit Jacket

「日本の雪山は、とにかく蒸し暑い」。気温は0〜-5℃前後なのに湿度は高く、樹林帯を登り始めて10分もしないうちに汗だくになった経験、ありませんか。ダウンを着ればすぐに暑くなり、フリース+レインシェルだと今度は蒸れが不快…。何を着てもイマイチしっくりこないのが、日本の雪山ハイクのやっかいなところです。

そんな環境で気になっている人も多いのが、Rabの「VR Summit Jacket」。イギリス発のアクティブインサレーションで、「動き続ける前提」のソフトシェル寄りジャケットです。この記事では、実際に日本の雪山で使ってみたうえでのリアルな登山レビューとして、「どんな気温・どんなシーンでちょうどいいのか」「どこからが物足りなくなるのか」を掘り下げていきます。汗かきな冬山ハイカーの行動着選びの参考になればうれしいです。

Rab「VR Summit Jacket」と日本の雪山ハイクの相性は?

日本の雪山は「気温は低いのに湿度が高くて蒸し暑い」「行動中にすぐ汗だくになる」という特徴があります。0〜-5℃前後の樹林帯をハイクアップしていると、ダウンや厚手フリースではすぐにオーバーヒートし、レインシェルを着っぱなしでも蒸れてしまいます。

Rab「VR Summit Jacket」は、そんな“日本の蒸し暑い雪山”にかなりハマるソフトシェル=アクティブインサレーションだと感じました。

結論としては、次のような立ち位置のジャケットです。

  • 行動中のメインアウターとしてちょうどいい「ヌケ感(抜けの良さ)」
  • 0〜-5℃前後・微風〜そこそこの風までなら単体で快適ゾーン
  • 汗かき体質の登山者ほどメリットを感じやすい
  • ただし「これ1枚で真冬の高所・悪天すべてOK」ではない

イギリス本国では高山登山やクライミング用の「高機能アクティブインサレーション」として位置づけられ、日本国内でも石井スポーツなどの専門店で“冬の行動着候補”として推されているモデルです。価格はおおむね2万円台前半〜中盤で、このクラスのアクティブインサレーションとしては標準〜ややお得なレンジだと思います。


Rab VR Summit Jacketの概要と特徴

レビューの要点

VR Summit Jacketの特徴をざっくりまとめると、次のとおりです。

  • カテゴリ:ソフトシェル寄りのアクティブインサレーション
  • 想定温度帯(行動中):おおよそ0〜10℃(風が強いときは0℃前後までが快適)
  • 得意シーン:日本の雪山の樹林帯登り、風弱めの稜線歩き、雪のない冬の低山
  • 素材構成:表地 Pertex Quantum Air × 裏地 TEIJIN Octa(Vapour‑Rise™コンセプト)
  • 強み:通気性が高く、汗を「逃がしながら」保温してくれる
  • 弱み:完全防水ではない/本気の吹雪や極低温には上からハードシェルや保温着が必須

実際に使っていて一番ラクだと感じたのは、「レインを脱いだり着たり」「ダウンを出したり仕舞ったり」という頻度が減ることです。Rab側の説明でも「秋〜春の0〜15℃前後の行動時に、着っぱなしでいられる」ことを狙った設計とされており、日本の雪山ハイクでの体感ともよく合います。

どんな登山者に向いているか

特に相性が良いのは、次のような登山者です。

  • 登りですぐ汗をかくタイプ
  • 冬でも行動時間が長いロングコースを歩く人
  • 「レイン+フリース」だと蒸れて不快、「ダウン」だと暑すぎると感じている人
  • 雪はあっても日本の中低山中心で、本格的なアルパインまでは行かない人
  • ハードシェルはあくまで“保険”にして、行動中はできるだけ着たくない人

一方で、

  • 厳冬期の北アルプス稜線をガッツリ歩く
  • 海外の高所登山など、マイナス2桁の世界をメインに考えている

といった登山者にとっては、VR Summit Jacket単体では役不足です。その場合は、より厚めのインサレーションやハードシェルとのセット運用が前提になります。Rabもこのモデルを「最も暖かいVapour‑Rise™ジャケット」としつつ、“真冬のハードシェルの下に着るミドルレイヤー”としての使い方も想定しています。


RabとVapour‑Rise™シリーズについて

RabというブランドとVapour‑Rise™コンセプト

Rabはイギリス発のアルパイン寄りアウトドアブランドで、「悪天候の山」で使える実戦的なウェア作りに定評があります。保温着ではダウンが有名ですが、実は「Vapour‑Rise™(ベイパーライズ)」というアクティブインサレーション系シリーズも、長年育ててきたブランドです。

Vapour‑Rise™のコンセプトは、ざっくりいうと次の3つです。

  • 汗をしっかり逃がす通気性・吸湿性
  • それでいて風をある程度止めて保温する
  • 行動しながら着っぱなしでいられる

つまり、「動き続ける人のためのソフトシェル+薄手インサレーション」という発想です。

イギリスの山も日本と同じく、「気温の割に湿度が高く、風と雨・雪が混じる」環境が多く、そうした背景の中でVapour‑Rise™は育ってきました。日本の雪山の「湿った寒さ」と相性がいいのは、このコンセプトが近いからだと感じます。

Rabは1980年代からアルパイン向けの中綿・ダウンウェアを作り続ける中で、「静的な防寒着」と「動きながら使う保温着」をはっきり分けて開発してきました。Vapour‑Rise™は後者の代表的シリーズで、その“頂点付近”に位置づけられているのがVR Summit Jacketです。

VR Summit Jacketの位置づけ

VR Summit Jacketは、Vapour‑Rise™シリーズの中でも「最も暖かい高山向けモデル」というポジションです。

ただし、いわゆる「ふかふかの中綿ジャケット」とは別物で、

  • ソフトシェル寄りのしなやかな着心地
  • 動きやすく、レイヤリングしやすい厚み
  • 行動着として一日中着ていられる

といった性格を持っています。

分類的には「アクティブインサレーションジャケット」と呼ぶのがしっくりきます。中綿ジャケットやダウンのような“静的保温”(休憩時に着てあたたまる)ではなく、

  • 登り・トラバース・小走りなど動いている時間が長い人向け
  • 「着て歩ける保温着」

というイメージのウェアです。

同じRabでも、PrimaLoft Gold Active+を使った中綿寄りのVRシリーズは休憩〜停滞にも強い一方、VR SummitはPertex × Octaの組み合わせで“行動寄り”に全振りしている印象です。「寒冷地の高山用だが、あくまで“動くためのウェア”」というのがメーカー側の想定です。


素材構成とスペック

Pertex Quantum Air × TEIJIN Octa

VR Summit Jacketのキモは、表地と裏地の組み合わせです。

表地:Pertex Quantum Air

軽量ナイロンでありながら、ある程度の防風性と高い通気性を両立したファブリックです。完全防風ではなく、風を“ある程度”通すことで、中にこもった熱と湿気を逃がしてくれます。

一般的なウィンドシェルよりも通気を許容する設計で、「冷やしすぎないベンチレーション膜」のような役割を担っています。

裏地:TEIJIN Octa(ポリエステル中空繊維)

日本の帝人が開発した中空ポリエステル繊維で、繊維一本一本が八角形の中空構造を持っています。

  • 軽い
  • かさ高があり、空気を溜めてくれる
  • 吸汗性が高く、汗を素早く拡散する

といった特性があり、薄くても暖かく、濡れても乾きやすいのが特徴です。

RabはこのOctaを「肌に近い側の薄いフリース的インサレーション」として用いており、従来の中綿よりも“薄く・軽く・抜けやすい”ミッドレイヤーを実現しています。

この2つの素材を組み合わせ、Vapour‑Rise™の思想でまとめることで、「抜けるけれど冷えない」「動いていても着続けられる」ジャケットに仕上がっています。

重量と携行性

重量はMサイズで約550g前後と、ダウンジャケットほど軽くはありませんが、ソフトシェルとしては十分軽量な部類です。「しっかり登山仕様だけど、常にザックに入れておける重さ」に収まっています。

ダウンのように超コンパクトにはなりませんが、

  • 軽量ソフトシェルとしては十分軽い
  • ぐしゃっと丸めてサイドポケットやザック上部に押し込める
  • 濡れても乾きが早く、扱いがラク

というバランスで、「ヘビロテ前提の行動着」としてちょうどいいと感じます。合成繊維なので、ダウンのような“濡れたら終わり”という不安も少なく、多少ラフに扱えるのも安心感があります。


日本の「蒸し暑い雪山」にちょうどいい理由

0〜-5℃前後で欲しい“ヌケ感”

本州の雪山中低山や里山では、次のような状況が多いです。

  • 樹林帯の気温が0〜-5℃
  • 風は弱い〜やや強い程度
  • 雪はあるが、湿り気を含んだ重めの雪

この条件だと、以下のようなストレスが出がちです。

  • 厚手中綿/ダウン:登りで暑すぎる
  • ハードシェル+フリース:汗で内側がベタつき、蒸れる
  • ソフトシェル単体:風が抜けすぎて寒い

どれか一つに振り切ると、「抜けすぎる」か「守りすぎる」かのどちらかに寄りやすく、どうしても我慢を強いられます。

VR Summit Jacketは、

  • 風はそこそこ止めるが、完全には遮断しない
  • 裏のOctaがほんのり暖かく、汗も吸い上げてくれる
  • ジャケット自体が“温度調整弁”のように機能する

という特性のおかげで、「0〜-5℃・風弱め〜中程度」のゾーンでバランスが良く感じられます。

Rab自身も「秋から春のトレッキング〜アルパインまで、気温0〜10℃付近での行動着」として推しており、本州の“ヌケ感がほしい雪山”とストライクゾーンが重なります。

行動中にちょうどいい通気と保温のバランス

実際に歩いていて感じるのは、次のような点です。

  • 樹林帯の登りでは、最初の10〜15分で体が温まる
  • そのままペースを上げても、「暑くて脱ぎたくなる」ほどにはならない
  • 汗をかいても、内側がビショビショに濡れる感じが少ない

Pertex Quantum Airの通気性のおかげで、

  • 行動中にわずかに風を通してくれる
  • 小さな「自然のベンチレーション」が常に働いている

というイメージで、汗がジャケット内にこもりにくくなっています。その結果、「汗冷えしにくい」感覚につながります。

Rabの説明でも「アクティビティ中の動的な熱・湿度調整を支えるシステム」とされており、“着るサーモスタット”のような役割を果たしてくれます。

汗かき登山者にとってのメリット

汗かきの人が冬山でつらいのは、次のようなパターンだと思います。

  1. 登りで汗をかきすぎる
  2. 休憩や稜線で一気に冷える
  3. レイヤリングで調整しようにも、頻繁な脱ぎ着が面倒になる

VR Summit Jacketの場合は、

  • 登りで多少汗をかいても、裏地が汗を吸い上げて拡散し、表地から逃がしてくれる
  • 体温がある程度一定に保たれ、休憩時の急激な冷えが和らぐ
  • レイヤーの脱ぎ着回数が減る

という流れになりやすいです。

汗をゼロにすることはできませんが、「汗をかく → こもる → 冷える」の悪循環をかなりマイルドにしてくれる印象でした。中綿ジャケットやレインシェル主体のレイヤリングと比べても、「汗をかく前にレインを脱ぐ・着る」という判断の頻度が明らかに減ります。


シーン別の使用感

※気温や風はあくまで目安としてください。

樹林帯の登り:レインなしでどこまでいけるか

条件イメージ レイヤー構成
気温0〜3℃/小雪〜曇り/風弱い 薄手メリノまたは化繊ベース+VR Summit Jacket

この条件では、レインシェルはほぼ不要でした。最初のアップで少しひんやり感じても、5〜10分歩けばすぐに快適ゾーンに入ります。

降雪があっても、湿雪でなければ表地の撥水性でそこそこ弾いてくれるので、短時間ならそのまま歩き続けられます。本降りの雨や、べちゃっとした重い雪に長時間さらされる場合は、さすがにレインシェルを足したほうが安心ですが、「とりあえずVR Summitだけで様子を見る」時間が長く取れるのはラクでした。

Rabのカタログ上でも「耐風性・撥水性はあるが防水ではない」という立ち位置で、英国の“霧雨〜にわか雪”想定のつくりです。日本でも“湿雪長時間”さえ避ければ、樹林帯の行動着としては十分信頼できます。

稜線での風と冷え:単体で耐えられる条件

条件イメージ 体感
気温-5〜0℃/風速5〜8m/晴れ〜薄曇り
  • 風が弱めなら単体+薄手ベースで問題なし
  • 風が強くなると「ほんのりスースーする」が我慢できるレベル
  • 立ち止まると胸・肩から冷えを感じやすい

「風による冷え」をどこまで許容できるかは個人差がありますが、風速5〜8m・気温-5℃くらいを超えてくると、

  • ハードシェルを上に足す
  • インナーダウンや厚手フリースを中に足す

といった対応が欲しくなります。Rabも「強風・降雪時はハードシェルと組み合わせてアルパイン用レイヤーにする」と明記しているので、日本でもここは素直に従ったほうが快適です。

行動停滞・休憩時:一枚で粘るか、シェルを足すか

条件イメージ おすすめ対応
気温-5℃前後/風弱め/休憩5〜10分
  • 短めの休憩ならVR Summit単体でもそこそこ耐えられる
  • 汗をかいた後は5分を過ぎたあたりから背中・脇に冷えを感じやすい
  • 上からハードシェルを羽織ると一気にラク

「長めの休憩」や「風が強い場所での行動停滞」がありそうな山行では、

  • VR Summit Jacket(行動着)
  • 薄手〜中厚手のインサレーション or ハードシェル(停滞・悪天用)

のどちらかは必ずザックに入れておきたいところです。Rabの他モデル(ダウンや合成中綿ジャケット)を“停滞用のプラス1枚”として組み合わせる前提で選ぶと、トータルの安心感がかなり増します。

雪のない冬の低山・里山ハイクでの使い勝手

気温条件 おすすめレイヤー例 コメント
5〜10℃・風弱い 薄手ベース+VR Summit 登りはフロントジッパーの開閉で温度調整完結
0〜5℃・風あり やや厚手ベース+VR Summit(+必要に応じてハードシェル) 稜線だけハードシェルを足す運用も可

冬の低山ハイクでは「着たり脱いだりが面倒だから、多少暑くても1枚で通したい」という人も多いと思いますが、VR Summit Jacketはまさにそういう人向けの1枚です。英国でも「冬場のハイキング・クライミングの“着っぱなしレイヤー”」として評価されており、日本の里山でも同じ感覚で使えます。


ディテールと使い勝手

フード周り:ヘルメット対応とフィット感

VR Summit Jacketのフードはヘルメット対応で、やや大きめの作りです。とはいえ、

  • 後頭部と前縁のドローコードでしっかり絞れる
  • 顔周りをキュッと締めても視界がそこまで狭くならない
  • 首〜顎周りを包み込むようにフィットし、冷気の侵入を防いでくれる

といった、登山向きのパターンになっています。

ヘルメットを被らない雪山ハイクでも、

  • ネックゲイター+フードで、かなり高い防寒性能を確保できる
  • フードと襟の立ち上がりが連続していて、首元がスースーしにくい

という点がうれしいポイントです。Rabはフード設計に定評がありますが、VR Summitも「被って動いてもストレスが少ない」バランスに仕上がっています。

ポケット配置:ハーネスやヒップベルトとの干渉

  • 両サイドに大きめのハンドポケット
  • モデルやロットによっては胸ポケット

いずれもやや高めの位置についているため、

  • クライミングハーネス装着時でも干渉しにくい
  • ヒップベルトを締めても、ファスナーの開閉がしやすい

といったメリットがあります。

ジッパープル(ファスナーの引き手)も、グローブをつけたままつまみやすい形状・大きさなので、冬山での操作性は良好です。ポケット内もフリースライニングの仕様が多く、休憩時に手を入れるとちょっとした“ミニ保温”になるのも便利です。

裾・袖口・ジッパーの調整機能

  • メインジッパー:操作しやすく、噛み込みも少ない印象
  • 裾:ドローコードでフィット調整可能
  • 袖口:ベルクロまたは伸縮カフ仕様で、グローブの上からでも下からでも合わせやすい

裾を絞れば冷気の侵入をかなり防げますし、袖口をタイトにすれば風が吹いても袖から冷えにくくなります。暑くなってきたら裾を緩めて「下から風を抜く」こともでき、行動中の微調整がしやすい作りです。

ロットによっては、フロントジッパーが2ウェイ仕様の場合もあります。ビレイ時や換気したいときに下側だけ開けて熱を逃がす、といった使い方ができ、「登山・クライミングでの実用性」を意識した設計といえます。


他ウェアとの比較

中綿ジャケットとの違い

一般的な中綿ジャケット VR Summit Jacket
保温力 断熱力が高く静的保温に強い “ふっくら感”は控えめで行動寄り
通気性 低めで行動中は蒸れやすい 高く、行動中に着っぱなしにしやすい

Rabの別ラインである中綿VRジャケットはPrimaLoft Gold Active+(55%リサイクル)を用い、より“断熱重視寄り”です。一方、VR SummitはOcta+Pertex Quantum Airで「断熱よりも動的な熱管理」を優先させています。

動く時間が長いならSummitという基準で選ぶとわかりやすいです。「行動中に暑くなりすぎると怖い」「汗冷えしたくない」という人にとっては、VR Summit Jacketくらいの“温まりすぎないウェア”のほうが安心な場面も多いはずです。

ダウンジャケットとの違い

ダウンジャケット VR Summit Jacket
軽さ・コンパクトさ 非常に軽くコンパクト ダウンほどではないが登山向きの軽さ
湿気への強さ 汗・湿りに弱く、濡れると保温力低下 合成繊維で濡れに強く乾きも早い
用途 静的保温向け防寒着 行動着として一日中着ていられる

日本の湿った雪や汗の多い環境を考えると、「本命の行動着はVR Summit Jacket、山頂やビバーク用に薄手ダウンをザックに入れる」という使い分けがしっくりきます。Rabの軽量ダウン(Microlight系など)とセットにすれば、厳冬期の中低山〜残雪期までかなり広いレンジをカバーできます。

ハードシェルとのレイヤリング

レイヤリングの中でのVR Summit Jacketの役割は、次の2パターンです。

  • ベースレイヤーの上に着る「行動用アウター」
  • ハードシェルの下に着る「アクティブインサレーション」
天候・条件 おすすめ構成
晴れまたは小雪・風弱め ベース+VR Summit(基本形)
風が強い・吹雪 ベース+VR Summit+ハードシェル(VRを中間着に)

VR Summit Jacketを「ソフトシェル兼インサレーション」として考え、ハードシェルはあくまで“天気が荒れたとき用の盾”にしておくと、運用のイメージがつきやすいです。


日本の雪山装備の中での位置づけ

ベースレイヤーとの相性

VR Summit Jacketは通気性が高いぶん、ベースレイヤーの選び方で着心地がかなり変わります。

  • 汗かき・ハイクアップ長めの人
    → 薄手〜中厚手の化繊 or メリノ+化繊ブレンドが相性よし
  • ゆっくりペース・休憩多めの人
    → 中厚手メリノやグリッドフリース系を合わせると保温力アップ

使い分けの一例としては、

  • 樹林帯登り:薄手化繊ベース+VR Summit
  • 稜線が冷えそうな日:薄手化繊ベース+薄手グリッドフリース+VR Summit

といった組み合わせです。Rabとしても「ベースは汗抜けの良い化繊系を」と推しており、Vapour‑Rise™の“動的保温”と相性の良い組み合わせになっています。

気温・標高別のレイヤリング例

条件 おすすめレイヤー構成
5〜10℃・里山 ベース(薄手)+VR Summit
0〜5℃・低山〜中低山(雪少なめ) ベース(薄手〜中厚手)+VR Summit+(風が強い日はハードシェルを携行)
-5〜0℃・雪山中低山・樹林帯多め ベース(薄手)+薄手フリース or グリッドフリース+VR Summit+(保険でハードシェル)
-10〜-5℃・標高高め・風強め ベース+中間着(フリースなど)+VR Summit+ハードシェル(VRは中間着のポジション)

VR Summitの「抜け」のおかげで、ベース〜ミッドレイヤーの厚みでかなりの調整幅が取れるため、手持ちのウェアとも組み合わせやすいです。

「これ一枚」と「上からシェルを足す」の境界線

コンディション 判断の目安
気温0℃前後・風速5m以下 VR Summit単体で行けるゾーン
気温-5℃前後・風速5〜8m 迷ったら「シェルを足す」ゾーン
それより厳しい(低温+強風) ハードシェルとセットで考えるゾーン

向いている山行・向いていない山行

相性が良いフィールド

VR Summit Jacketと相性がいいのは、次のようなフィールドです。

  • 本州の雪山中低山(標高〜2,000m前後)
  • 樹林帯が多く、稜線に出る時間がそれほど長くない山
  • 冬〜早春の低山・里山ハイク
  • 雪はあるが、北アルプスの冬期縦走ほど過酷ではないルート

具体的には、

  • 八ヶ岳の樹林帯中心のルート(赤岳鉱泉までなど)
  • 奥多摩・丹沢・鈴鹿の冬季〜残雪期ハイク
  • 北関東・甲信の1,000〜2,000m級の雪山入門ルート

といったエリアとの相性が良い印象です。ヨーロッパでは、スコットランドやアルプス前衛の“風+湿雪+低温”エリア向けの声が多く、日本ではちょうどこのクラスのフィールドに相当します。

物足りなくなる場面

逆に、次のような条件ではVR Summit Jacket単体では防御力不足です。

  • 厳冬期の北アルプス稜線
  • 冬の北海道・東北の高山
  • 風速10mオーバーの吹きさらし
  • 気温がマイナス2桁のコンディション

この場合は、

  • VR Summitを中間着にして、その上にしっかりしたハードシェルを常用する
  • 休憩・ビバーク用に、さらに高保温のダウンまたは中綿ジャケットを追加する

といった形で、「一枚の万能アウター」ではなく「レイヤリングの一パーツ」として運用する前提になります。Rabも公式に「アルパイン・冬季クライミングではハードシェルや高断熱インサレーションと組み合わせて使う」ことを推奨しています。

UL志向・のんびり山行、それぞれの視点

  • UL志向寄りの人
    もっと軽量なウィンドシェル+薄手インサレーションの組み合わせを好む人には、VR Summitは「やや重い」と感じられるかもしれません。
    とはいえ、1枚で幅広いコンディションをカバーできるので、「アイテム点数を減らしたい」という意味ではUL的ともいえます。レイン+フリース+軽量中綿の3枚を、VR Summit+軽量レインの2枚にまとめるような“総量削減型”にはハマりやすいジャケットです。
  • のんびり山行派の人
    歩くペースがゆっくりで、休憩を多めに挟む人には、VR Summitの保温力は心強いです。
    ただし休憩時間が長くなる山行では、もう一枚厚手の防寒着を足しておくと安心です。行動中はVR Summit、昼食やコーヒータイムにだけダウンを羽織るといった“快適系レイヤリング”が組みやすくなります。

サイズ感とフィット

普段着とのサイズ差

Rabは欧州ブランドらしく、やや細身で腕・着丈が長めの傾向があります。

  • 日本ブランドでMサイズを着る人は、RabではS〜M相当
  • ミドルレイヤーを挟みたいなら「普段よりワンサイズ上」も検討

VR Summit Jacket自体は「行動着」でありながら、そこまでタイトフィットではなく、ある程度のゆとりがあります。

ベース+薄手フリース+VR Summitくらいを想定するなら、いつものサイズかワンサイズ上を試すのがおすすめです。日本のショップでも「普段着サイズでジャスト〜ややタイト」「厚着したい人はワンサイズアップ推奨」という声が多い印象です。

体型別の着用感

  • 肩まわり:クライミングやポールワークを想定しているため、肩の可動域は広め。肩幅広めの人でも動きやすい作り。
  • 腕の長さ:袖はやや長め。リーチが長い人でも手首が出にくく、腕が短めの人は少し余りを感じる場合あり。
  • お腹まわり:標準〜やや細身体型向き。お腹まわりがしっかりしている人は、ワンサイズ上げたほうがストレスなく動ける可能性あり。

ヨーロッパ基準のパターンなので、着丈が少し長めでヒップまでそれなりにカバーしてくれます。雪面に座ったときや、風の吹き上げを受ける稜線でも、腰まわりが露出しにくいのはありがたい点です。

試着時にチェックしたいポイント

  • 腕を上げたり振ったときに、裾がどのくらい持ち上がるか
  • ベース+いつもの中間着を着た状態で、脇や肩がきつくないか
  • フードを被った状態で、左右を向いても視界が遮られないか
  • ヒップベルトを締めたときに、裾が不快に食い込まないか

Rabはモデル更新のたびにフィットを細かく調整しているので、できれば実店舗で現行ロットを試着してからサイズを決めるのが安心です。


メリット・デメリットまとめ

良いと感じた点

  • 日本の「湿度高め・気温低め」の雪山環境にマッチする通気×保温バランス
  • 樹林帯の登り〜風弱めの稜線まで、レイヤリングの手間を減らせる
  • 裏地Octaの“ほんのり暖かいのに蒸れにくい”着心地
  • フード・ポケット・ドローコードなど、登山用途をよく考えたディテール
  • 濡れに強く、汗や湿雪でも安心して使える
  • Rabらしいアルパイン志向の設計で、「使いどころ」がイメージしやすい

環境配慮の観点では、中綿VRジャケットほどリサイクル率は前面に出していないものの、PertexやOctaといった長寿命の高機能素材を用いることで、「長く使える=結果としてエコ」という思想に沿ったつくりになっています。

人を選ぶと感じた点

  • 完全防水ではなく、防風性も「完全遮断」ではない
    → 吹雪や強風下ではハードシェル前提
  • ダウンほど軽量・コンパクトではない
    → UL志向で“重量1gでも削りたい”人にはやや重く感じる
  • 中綿ジャケットのような「着た瞬間のホカホカ感」はない
    → 静的保温を重視する人には物足りない場面もある
  • 日本ではまだ使用者レビューが多くなく、サイズ感や耐久性など細かい情報は自分で確かめる必要がある

ただ、「厳冬期ガチアルパイン用のハードシェル」や「テント用の極厚ダウン」など別カテゴリと比べてしまわなければ、雪山ハイク用の行動着としてはかなりバランスの良いポジションにあるジャケットです。

価格とコストパフォーマンス

価格帯は2万円台前半〜中盤で、同クラスのアクティブインサレーションとしては「高すぎないが安くもない」レンジです。

比較対象としては、

  • 他ブランドのアクティブインサレーション(Polartec Alpha系など)
  • ソフトシェル+薄手インサレーションの2枚構成

といった選択肢がありますが、

  • 「1枚である程度完結させたい」
  • 「日本の雪山中低山をメインに考えている」
  • 「RabのVapour‑Rise™コンセプトに魅力を感じる」

という人にとっては、コスパは十分高いと感じます。ヨーロッパでは、同等機能のArc’teryxやPatagoniaのアクティブインサレーションより“やや手に取りやすい価格”であることが多く、「性能に対して価格がこなれているブランド」としてRabが選ばれている背景もあります。


総評:Rab VR Summit Jacketは“正解に近いソフトシェル”か

日本の蒸し暑い雪山ハイク用ジャケットとして

日本の雪山、とりわけ“蒸し暑い雪山ハイク”という視点で見ると、VR Summit Jacketはかなり「正解寄り」のソフトシェルだと感じます。

  • 0〜-5℃前後+湿った空気というやっかいな条件下で
  • 汗をかきながらも冷えにくい
  • レイヤリングの手間を減らしてくれる
  • 濡れにも強く、気を使わなくていい

という点は、大きなアドバンテージです。

「完全防水・完全防風・マイナス20℃でも快適」といった万能ジャケットではありませんが、日本の現実的な雪山ハイキングの条件を考えると、「そこまでの性能は不要」「むしろ適度に抜けてくれたほうが快適」という場面のほうが多いのも事実です。イギリスの“湿った寒さ”を前提に磨かれてきたVapour‑Rise™のコンセプトが、そのまま日本の雪山ハイクにもフィットしていると感じます。

こんな登山スタイルならおすすめ

次のようなスタイルの登山者であれば、VR Summit Jacketはかなり“正解に近いソフトシェル”だと思います。

  • 本州の雪山中低山・里山を中心に歩いている
  • 冬でもペースはそこそこ早めで、行動時間が長い
  • 汗かきで、冬でもウェアの蒸れや汗冷えに悩んでいる
  • レインやダウンを頻繁に出し入れするのは面倒で、「着っぱなしの行動着」が欲しい
  • ハードシェルはあくまで保険で、普段はできるだけ着たくない

一方で、

  • 真冬の高所・悪天をメインに攻めたい
  • UL的にもっと軽くコンパクトな装備に振り切りたい
  • 静的保温(テント場・山頂)での“ぬくぬく感”を最優先したい

という人は、より厚手のダウンや中綿ジャケット、あるいは超軽量なウィンドシェル+インサレーションなど、別の選択肢のほうが満足度が高いかもしれません。

「日本の蒸し暑い雪山ハイクを、できるだけラクに、快適に歩きたい」
そう考えている登山者にとって、Rab「VR Summit Jacket」は“ちょうどいいところを突いてくる”1枚だといえます。

日本の雪山ハイクでいちばん悩ましいのは、「寒いのに、歩き出すとすぐ暑くて蒸れる」あの感じではないでしょうか。VR Summit Jacketは、まさにそのギャップをなだらかにしてくれる一枚だと感じました。

0〜-5℃前後の樹林帯なら単体で気持ちよく歩けて、登りで汗をかいても内側がベタつきにくい。一方で、稜線の強風やマイナス2桁の世界では、素直にハードシェルやダウンを足したほうが安心です。

「雪山は中低山メイン」「汗かきでレイヤリングの脱ぎ着が多くてうんざりしている」という人ほど、この“抜けるけど冷えにくい”性格がしっくりくるはず。万能な鎧ではないけれど、日本の蒸し暑い雪山ハイクを気楽に楽しみたい人にとっては、かなり解像度の高い答えに近いソフトシェルだと思います。

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