「タイツが苦手」な登山者へ ― なぜCROSS RUN PANTに注目したのか
登山のボトムス選びで、「動きやすさは欲しいけれど、ピタピタのタイツにはどうしても抵抗がある」という声は少なくありません。そんな“タイツNG派”の視線を引き寄せているのが、サロモンのCROSS RUN PANTです。「トレイルランニング用」と聞くと、登山とは少し距離があるように感じるかもしれませんが、実際に山で試してみると、その印象はいい意味で裏切られました。
4ウェイストレッチによる脚さばきの軽さ、インナーボクサー一体型ゆえの快適さ、そして細身なのにタイツほど密着しない絶妙なシルエット。これらが組み合わさることで、「タイツは嫌だけど、ゴワゴワの登山パンツにも戻りたくない」というワガママを、かなりの次元で満たしてくれます。
この記事では、「サロモン CROSS RUN PANT 登山 レビュー」として、実際の山行で感じた使い心地やメリット・弱点、ほかのサロモンパンツや一般的な登山パンツとの違いを、タイツが苦手な登山者の目線から詳しくお伝えしていきます。
「タイツが苦手」な登山者のよくある悩み
登山パンツ選びでよくあるのが、「動きやすさは欲しいけれど、タイツはどうしても苦手…」という悩みではないでしょうか。
レギンス・タイツが苦手な理由としては、
- ピタピタして脚のラインが出るのが恥ずかしい
- コンプレッションの締め付けがしんどくて長時間履けない
- 化繊タイツのテカテカした見た目が好きになれない
- 山小屋や下山後の街中で「いかにもトレラン!」な格好になるのが嫌
- 蒸れやすくて、脱ぐときに肌に張り付いて気持ち悪い
といったものがあると思います。
筆者もまさにこのタイプで、トレラン用のタイツやレギンスはたくさん試したものの、結局はゆったりめのストレッチパンツに戻ってくる…というのを繰り返していました。
そこで、「タイツほどピタピタしないのに、脚さばきはトレラン並みにいいパンツ」が欲しくて探していて、目に留まったのがサロモンの「CROSS RUN PANT」です。
サロモンには登山・トレラン向けのパンツが他にもありますが、その中でCROSS RUN PANTを選んだ理由は、
- CROSSシリーズがもともとトレイルランニング用として高評価
- 4ウェイストレッチで動きやすさに特化した設計
- インナーボクサー付きで股擦れ対策も期待できる
- レギンスほどピタピタしない細身シルエットで見た目の抵抗感が少ない
- PFCフリー撥水で、軽い雨や朝露ならある程度しのげる
という点でした。
サロモン自体も元はスキーギアのブランドですが、近年はトレイルランニングや「登山×ラン」のクロスオーバー分野を強く推していて、CROSSシリーズはその象徴的なラインです。スキーやバックカントリーで培ったパターン設計と、トレランで鍛えられた軽量性・速乾性がミックスされた「ハイブリッド系パンツ」という位置づけになっています。
レビュー条件(体型・サイズ・山域と季節)
以下のレビューは、次のような前提での使用感です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 身長 | 170cm |
| 体重 | 62kg |
| 体型 | やや細身、太ももやお尻はそこそこ筋肉質 |
| 普段のボトムス | アウトドアパンツはメンズMが多い、ジーンズは29〜30インチ |
| CROSS RUN PANTの着用サイズ | メンズM(ジャスト)、メンズL(ややゆったり) |
使用した山域と季節は、
- 5月:関東近郊の低山〜中低山(標高1,000〜1,500m)、日帰り
- 7〜8月:真夏の低山ハイク・トレイルラン寄りの山行
- 9〜10月:秋の縦走(標高2,000〜2,800m帯)、2泊3日テント泊
です。この条件を踏まえて、「サロモン CROSS RUN PANT 登山 レビュー」としての実感をまとめます。
サロモン CROSS RUN PANTってどんなパンツ?
スペックと基本特徴
CROSS RUN PANTの基本的な仕様は次のとおりです。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 用途 | トレイルランニング/ジムトレーニング/ファストハイク向け |
| 素材 | 軽量な化繊メインの4ウェイストレッチ素材 |
| 構造 | インナーボクサーショーツ一体型 |
| 撥水 | PFCフリー撥水加工 |
| 重量 | 非常に軽量(一般的な登山パンツより明らかに軽いクラス) |
| 価格帯 | おおむね10,000〜15,000円前後(時期・ショップにより変動) |
特徴的なポイントは次の4つです。
-
4ウェイストレッチ
縦横どの方向にもよく伸びる素材で、足上げやしゃがみ込み時の突っ張りがほぼありません。スキーウエアでも使われる可動域重視のパターンを流用したような作りで、特に股関節まわりの動きやすさが優秀です。 -
インナーボクサー付き
薄手のインナーボクサーショーツが内蔵されていて、股擦れ対策やフィット感の向上に貢献します。トレイルランレースでも使えるよう、長時間の摩擦に耐える設計です。 -
シンプルなポケット構成
ランニング用途が前提なのでポケット数は最小限です。背面にジップ付きポケット、もしくはサイドの小物用ポケットといった構成で、鍵やジェル、スマホ程度に絞って「揺れにくさ」を優先したデザインになっています。 -
PFCフリー撥水加工
小雨や朝露なら水滴が玉状にはじきます。環境負荷の高いフッ素系撥水剤を使わず、ある程度の耐久性を持たせた仕様です。防水パンツではありませんが、ドライ寄りの山行には十分です。
「ランニングパンツなのに登山で使える」と感じたポイントは、
- 4ウェイストレッチ+テーパードシルエットで足上げがとてもラク
- インナーボクサー付きで汗をかいても擦れにくい
- 軽くて嵩張らず、サブパンツとしても持ち運びしやすい
- 撥水性・速乾性が高く、汗や朝露に濡れてもすぐ乾く
といった点です。
またCROSSシリーズ全体として「山と街をまたいで使えるデザイン」を意識しているため、ロゴや切り替えが過度に主張しません。トレイルランレースから里山ハイク、ジムトレーニングまでシームレスに使える“マルチユースな一本”という立ち位置です。
他のサロモンパンツ・防水パンツとの違い
CROSS RUN PANTとCROSS 2IN1(ショーツ)の比較
同じCROSSシリーズの「CROSS 2IN1」はショーツ+インナーの2in1タイプで、丈は太ももまでです。夏のトレイルランや真夏の低山には最高ですが、登山で使うには、
- 日焼け・虫刺され対策が必要
- 岩や藪で脚を傷つけやすい
- 風が強い稜線では肌寒い
といった弱点があります。
それに対してCROSS RUN PANTは、
- ロングパンツなので脚の保護力が高い
- タイツほどピタピタせず、細身の登山パンツに近い見た目
- 寒暖差のある春・秋や、夏でも風が強い稜線で安心感がある
という点で、登山寄りの使い方に向いている印象です。
CROSS 2IN1はインシームが短く「走ること」に振り切った作りですが、CROSS RUN PANTは「山を長く歩く」「ときどき走る」というミックススタイルを想定したバランス型。どちらもインナー一体型というコンセプトは同じですが、脚の露出をどこまで許容できるかで選び方が変わってきます。
CROSS RUN PANTとOUTERPATH 2.5L防水パンツの役割分担
サロモンには「OUTERPATH 2.5L Waterproof」のような本格的な防水パンツもあります。こちらは2.5レイヤー構造の防水メンブレンを使った、いわゆるレインパンツ的なアイテムです。
役割分担は次のイメージです。
- CROSS RUN PANT:メインの行動パンツ(ドライ〜小雨まで)。軽さと動きやすさ重視。
- OUTERPATH 2.5L:雨が強いときに上から重ねるシェルパンツ。防水・防風専用。
どちらもPFCフリー撥水で環境配慮型ですが、OUTERPATHはサロモンの「AdvancedSkin Dry」系テクノロジーを使った“シェル”、CROSS RUN PANTはあくまで“アクティブ用行動パンツ”です。バックパックの中にOUTERPATHを入れ、脚にはCROSS RUN PANTを履いて天候に応じてレイヤリングする、という使い方が想定されていると感じます。
「防水パンツではない」けれど登山で使う理由
CROSS RUN PANTは防水パンツではないので、「雨の日にこれ一枚で安心」というアイテムではありません。それでも登山で使う理由は、
- 晴れ〜曇りベースの山行では、防水性より「動きやすさ」「軽さ」「通気性」が重要になる
- 防水パンツをずっと履きっぱなしにすると蒸れて疲れやすい
- 雨が強いときだけ、防水パンツを上から重ねればよい
という運用ができるからです。
日本の夏〜秋の山では、「行動パンツは軽量ストレッチ+レインパンツはザックに」の組み合わせが最も現実的だと感じています。サロモンも、CROSS系パンツとOUTERPATH 2.5Lクラスをセットで展開することで、「常に完全防水でいる」のではなく「濡れてもすぐ乾く・必要なときだけ完全防水を足す」という発想を前面に出しています。
実際に登山で使ってわかった「動きやすすぎる」理由
急登・岩場・段差での動きやすさ
CROSS RUN PANTを初めて履いて登ったとき、いちばん強く感じたのが「急登での足上げのラクさ」です。
- 大股で一気に段差を登る
- 岩場で大きく足を開いてスタンスを取る
- 深い膝曲げ姿勢でしゃがむ
といった動きをしても、生地の突っ張り感がほとんどありません。
4ウェイストレッチが効いていると感じたシーンは、
- 岩場トラバースで横方向に足を送るとき
- 高さのある段差を乗り越えるとき
- テント設営で立ったりしゃがんだりを繰り返すとき
- 下山時にテンポよく小走りになるとき
など、あらゆる場面で「生地が体の動きについてくる」感覚があります。
タイツ・レギンスと比べると、
- タイツ:肌に密着して動きやすさはあるが、締め付けやピタピタ感が気になる
- CROSS RUN PANT:膝〜太ももに適度なゆとりがあり、ストレッチで引っかかりゼロ
という違いがあります。動きやすさだけならタイツも優秀ですが、「精神的なストレスの少なさ」まで含めると、長時間の山行にはCROSS RUN PANTのほうが向いていると感じました。
バックカントリーのキックターンのような大きな足上げも想定したパターンだけあり、股下〜ヒップまわりの突っ張りが少ないのも特徴です。岩と岩の間に腰を落として体勢を取り直すような動きでも、パンツに引っ張られる感覚がほとんどありません。
長時間行動での快適性と疲労感
長時間行動では、ストレッチ性だけでなく「生地の柔らかさ」と「締め付け感の少なさ」が重要です。
CROSS RUN PANTは、
- 肌当たりがかなりソフト
- ウエスト周りがフラットな作りでゴムの食い込みが少ない
- 太もも〜ふくらはぎも、ピタピタすぎず、ゆるすぎない
といったバランスで、縦走で10時間近く動き続けてもストレスがたまりにくいと感じました。
また、シワや突っ張りが出にくいパターン設計で、
- 太ももの前側がつっぱって歩幅が狭くなる
- 膝裏にシワがたまって違和感が出る
といった「じわじわ効いてくる疲れ要因」がかなり抑えられています。
2泊3日の縦走で、他ブランドのやや厚手のストレッチパンツと履き比べたときには、
- 下山時の脚のだるさが少ない
- 腰回りや股関節のストレスを感じにくい
と感じました。軽量・薄手ゆえに「布を動かすためのエネルギー」が少なくて済むこともあり、長い登り下りではこの“わずかな差”が積み重なって効いてくる印象です。
タイツが嫌いでも「これなら履ける」と思えたポイント
ピタピタしないのに脚さばきが良いシルエット
CROSS RUN PANTのシルエットは、「細すぎないテーパード」です。
おおまかに言うと、
- 太もも:ほんの少しゆとりあり
- 膝:動きを邪魔しない程度にフィット
- ふくらはぎ〜裾:やや細めで、裾周りはスッキリ
という印象で、「いかにもランタイツ」というピタピタ感はありません。
このシルエットのおかげで、
- タイツ的な恥ずかしさがほとんど出ない
- 山小屋でも細身の登山パンツとしてなじむ
- 下山後に街中を歩いても「アウトドアパンツの人」くらいの見え方
で収まります。トレランレギンスが苦手な人でも、「これならギリギリOK」と感じやすいラインをうまく突いているデザインです。
サロモンはスキーウェアでもタウンユースを意識したデザインが多く、「機能は本格的だけど見た目は控えめ」という方向性がCROSS RUN PANTにも反映されています。山でも街でも使いやすいバランスです。
インナーボクサーの履き心地と擦れ対策
インナーボクサー付きパンツの大きな魅力は、「股擦れしやすい人」にとっての安心感です。
CROSS RUN PANTのインナーボクサーは、
- かなり薄手で、メッシュ寄りの軽い履き心地
- 縫い目がフラットで、長時間擦れても痛くなりにくい
- 本体生地との一体感があり、ズレやたるみを感じにくい
という作りで、汗をかく夏場でも快適でした。
下着との重ね履きについては、
- 蒸れが気になる人:インナーボクサーをインナーショーツとして使い、下着は履かない(自己責任ですが、一番快適でした)
- ラインが出るのが気になる人:薄手のボクサーブリーフ+インナーボクサーの二重履き。やや蒸れますが安心感は高いです。
といった使い方が現実的です。
「タイツ代わりに使えるか?」という点については、
- 真夏〜初秋の3シーズンの登山なら、タイツの代わりとして十分いける
- 冷え込みが強い早春・晩秋は、CROSS RUN PANTの下に薄手タイツを追加したくなる場面もある
という印象でした。保温性までタイツ並みとはいきませんが、脚さばきの面では十分に代替になります。
また、インナー一体構造は「荷物を減らせる」という意味でもメリットがあります。サロモンは同じコンセプトをショーツのCROSS 2IN1でも採用しており、レースやファストパッキングでの“装備ミニマム化”をかなり意識しているのが伝わります。
登山で気になるポイントを徹底チェック
通気性・速乾性 ― 夏山から秋山までの使用感
通気性と速乾性は、ランニング由来のパンツだけあってかなり優秀です。
- 真夏の低山(気温30度前後)でも、汗でベタつきにくい
- 稜線で風が抜けると、汗冷えというより「スッと乾いていく」感覚
- テント泊で夕方に軽く洗って干すと、翌朝にはほぼ乾いている
といった具合で、「濡れっぱなしで不快」という時間帯が短く済みます。
特に「膝裏」「股関節まわり」といった汗が溜まりやすい部分の乾きの早さが印象的でした。インナーボクサーと本体生地の組み合わせもよく、乾きムラがあまり出ません。
同社の防水系パンツ(OUTERPATH 2.5Lなど)と比べると速乾性は段違いで、「雨に濡れたあとも、晴れれば歩きながら乾かせる」レベルです。トレイルレースなど“濡れても着替える余裕がない”状況を想定して作られている背景がよく出ています。
撥水性・耐水性 ― 「どこまで雨に耐えられるか」
撥水性については、
- 小雨・霧雨・朝露レベル:水滴が玉状にはじかれ、表面を転がり落ちる
- 湿った草原をかき分ける程度:生地表面で水が滑り、内部までは染みにくい
という印象で、「ちょっとした濡れ」にはかなり強いです。
一方で本降りの雨では、
- 15〜20分も歩いていると、太もも〜お尻あたりにじわじわ水が染みてくる
- 完全防水ではないので、長時間の雨行動には向かない
という限界がはっきり出ます。
実際の運用としては、
- 小雨:フード付きソフトシェル+CROSS RUN PANTで様子を見る
- 雨が強まってきたら:ジャケットと同時にOUTERPATH 2.5Lなどの防水パンツを上から重ねる
という2段階運用が現実的だと感じました。
なお、サロモンのシューズラインには完全防水の「DRYメンブレン」搭載モデルもありますが、CROSS RUN PANTはあくまでその“外側の撥水生地”的な立ち位置です。水没前提ではなく、「雨をある程度いなしつつ、汗をすばやく逃がす」方向に振った設計だと理解しておくとミスマッチを防げます。
耐久性・岩や藪との相性
CROSS RUN PANTは軽量ストレッチパンツなので、厚手の登山パンツほどの耐久性はありません。ただし実際に使ってみると、
- 軽い岩場を何度か通過した程度では、目立つ擦り傷はつかない
- 低山の藪や膝丈の笹をかき分けても、一発で破れるようなことはない
- 泥汚れは帰宅後にぬるま湯洗いですぐに落ちる
といった具合で、通常の「低山〜中級の夏山」レベルなら十分タフだと感じました。
摩耗しやすい膝・尻周りについては、
- 10回以上の山行+日常使用で、うっすら毛羽立ちが出るかな、という程度
- 岩に座り込むことが多い人は、尻部分の薄さを少し気にしたほうがよい
という印象です。
トレイルラン用途と併用しても、
- ランニング(週1〜2回)+登山(月2〜3回)で半年使って、ストレッチ性はほぼ変化なし
- 生地の光沢が少し変わる程度で、機能的な問題は感じない
というレベルでした。
CROSSシリーズのショーツやOUTERPATH 2.5Lパンツのユーザーレビューでも、「軽さ優先だが、すぐ穴があくほどヤワではない」という声が多く、CROSS RUN PANTもその系譜にあるといえます。アルパインクライミングでの酷使は想定されていませんが、一般的なハイキング〜縦走レベルなら十分信頼できる耐久性です。
サロモン CROSS RUN PANTを登山で使うメリット・デメリット
実感したメリット
登山で使ってみて良かった点は次のとおりです。
-
タイツより心理的ハードルが低い
ピタピタしすぎない細身シルエットで、「脚のラインを見せている感」が少なく、山小屋や街中でも浮きにくいので着替えや荷物を減らせます。 -
軽量でパッキングしやすい
ザックの中でほとんど場所を取らないので、サブの着替えパンツとしても気軽に持っていけます。 -
トレラン〜低山ハイク〜日常まで使い回せる
トレイルラン、ファストハイク、ゆるハイク、普段着まで幅広く対応し、旅行や街ラン用としても使えるため、「1本持っておくと出番が多い」タイプです。 -
環境配慮型で、長く使う前提で選びやすい
PFCフリー撥水やリサイクル素材の採用など、サステナビリティも意識した設計で、今後主流になっていきそうな方向性の一本です。
軽量志向・ミニマル志向の登山者には特に刺さる要素が揃っています。
気になったデメリット
一方で、人を選ぶと感じた点もあります。
-
寒い季節・標高の高い山には単体だと物足りない
生地が薄めで保温性はそれほど高くありません。晩秋や春先、標高2,500m以上の稜線では、タイツや防風シェルとの併用が前提になります。 -
ポケットが少なく収納力が弱い
登山パンツとして見るとポケット数がかなり少なめです。スマホ・行動食・地図などをすべてパンツに入れておきたい人には物足りなく感じると思います。 -
岩稜帯メインのハードな山行にはやや不安
薄手&軽量生地なので、鋭い岩との擦れにはそれほど強くありません。アルパイン寄りのルートや岩稜帯メインでは、もう少し厚手のパンツを選びたくなります。 -
防水パンツの代わりにはならない
サロモンの防水アイテム(OUTERPATH 2.5LやDRYメンブレン搭載シューズ)と同じ感覚で選ぶと、「意外と濡れる」と感じるはずです。防水パンツの代替にはなりません。
どんな登山スタイルに向いている?おすすめシチュエーション
相性が良い山行シーン
CROSS RUN PANTが特にハマるのは、次のようなスタイルです。
-
日帰り低山ハイク
標高1,500m前後までの里山・低山では、軽さと脚さばきの良さがとても快適です。下山後にそのまま温泉や街に寄るときも違和感が少ないのが便利です。 -
トレイルランニング+ハイクのミックス
上りは歩き、下りやフラットは軽く走るような「ゆるラン山行」にぴったりです。タイツほど“ガチ感”がないので、トレランにチャレンジしてみたいハイカーにも向いています。 -
残雪期を除く3シーズンの縦走(タイツ・防水パンツ併用前提)
5〜10月の縦走では、CROSS RUN PANT+レインパンツの組み合わせが非常に軽快です。朝晩冷え込む時期は、薄手タイツを中に仕込めば対応範囲を広げられます。 -
山と街をまたぐ旅行・遠征
移動日〜観光〜軽いハイクを1本でこなしたい人にも相性が良いです。荷物を減らしたい旅行スタイルとよくマッチします。
あまりおすすめしないシチュエーション
CROSS RUN PANTがメインパンツとしてはあまり向かない場面は次のとおりです。
- 真冬の雪山・厳冬期縦走
- 岩稜帯のクライミング要素が強いルート
- 膝下まで濡れる渡渉が多い山域
- レインパンツを持たず“完全防水一枚運用”を狙うケース
そういった場合は、GORE-TEXなどを用いた防水パンツや、厚手・高耐久ソフトシェルパンツをメインに据えたほうが安全です。
サイズ感・フィット感レビュー(失敗しない選び方)
筆者の体型と着用サイズ
改めて、筆者の体型とサイズ選びです。
| 項目 | 数値・傾向 |
|---|---|
| 身長 | 170cm |
| 体重 | 62kg |
| 一般的なアウトドアパンツ | メンズM |
| CROSS RUN PANT | メンズMがジャスト、メンズLはややルーズめ |
Mサイズのフィット感は、
- ウエスト:ジャスト。ベルトなしでも落ちない
- 太もも:ピッタリしすぎず、適度なフィット
- 裾丈:くるぶし少し上〜ジャストくらい
Lサイズは、
- ウエスト:ややゆとりあり(ドローコード調整前提)
- 太もも:やや余裕があり、リラックス感が増す
- 裾丈:やや長めで、シューズに軽くかかるくらい
というイメージです。
普段のサロモンの登山用パンツと比べると、CROSS RUN PANTはやや細めの印象で、「いつものサロモンサイズ=ジャスト〜やや細身」と考えておくとよいと思います。
サイズ選びのポイント
サイズ選びの際に意識したいのは次の点です。
-
ジャストかワンサイズアップか
・ジャストサイズ:脚さばきとフィット感を最大限生かせる。トレラン寄りの使い方ならこちら。
・ワンサイズアップ:見た目はややリラックス。中にタイツを仕込みたい人にも向きます。 -
裾丈とシューズ・ゲイターとのバランス
くるぶしジャスト〜やや短めくらいが、シューズと干渉しにくく快適です。ゲイターを併用する人は、裾が長すぎるとたるんで邪魔になるので注意が必要です。 -
女性・小柄な人の注意点
メンズモデルだけだと丈が長くなりがちなので、ウィメンズモデルがあればそちらを優先したほうがフィットしやすいです。小柄な方は「ウエストで合わせると丈が余る」問題が出やすいので、可能なら試着をおすすめします。
サロモンは全体的に「細め・スポーティ寄り」のフィットが多いブランドです。CROSS RUN PANTも同様で、「ゆるっと履きたい」人はワンサイズ上を前提に考えると失敗しにくいと思います。
他ブランドのパンツと比較してみた
一般的な登山用ストレッチパンツとの比較
よくある「厚手ストレッチの登山パンツ」と比べたときのバランスは次のようになります。
| 比較項目 | CROSS RUN PANT | 一般的なストレッチ登山パンツ |
|---|---|---|
| 動きやすさ | ◎ 非常に良い | ○ 良好 |
| 軽さ | ◎ 圧倒的に軽い | △ 普通〜やや重め |
| 耐久性 | ○ 3シーズン山行なら十分 | ◎ 厚手でタフ |
| 汎用性 | ラン/ハイク/日常まで幅広い | 登山専用寄り |
純粋に「登山だけで使うパンツ」として選ぶなら厚手モデルにも魅力がありますが、「山にも街にも、ランにも使える1本が欲しい」という人にはCROSS RUN PANTの汎用性は大きな武器になります。
近年は「トレイルラン×登山×街」のボーダーレス化が進んでいて、サロモンのCROSSシリーズはノースフェイスやパタゴニアの軽量トレイルパンツと競合するポジションにあります。その中でもインナーボクサー一体型という点で個性が際立っていると感じました。
タイツ+ショーツスタイルとの比較
トレランで定番の「タイツ+ショーツ」スタイルと比べると、次のような違いがあります。
-
解放感
・タイツ+ショーツ:常に脚にフィットしてホールド感はあるが、人によっては窮屈
・CROSS RUN PANT:膝〜太ももに程よく空間があり、ストレスが少ない -
保温性
・タイツ:密着するぶん、薄手でもそこそこの保温力
・CROSS RUN PANT:生地が薄めで隙間があるため、単体での保温力は控えめ -
見た目
・タイツ+ショーツ:スポーティで好みが分かれやすい
・CROSS RUN PANT:細身の登山パンツ〜トレイルパンツ風で万人受けしやすい -
着替えやトイレのしやすさ
・タイツ+ショーツ:レイヤーが多く、脱ぎ着が少し手間
・CROSS RUN PANT:インナーボクサー一体なので、1レイヤー分シンプル
タイツスタイルが好きな人にはタイツのメリットも大きいですが、「タイツの見た目と締め付けがどうしても苦手」という人には、CROSS RUN PANTがちょうどよい折衷案になると感じました。
タイツ+ショーツはどうしても「レース感」「アスリート感」が強く出ますが、CROSS RUN PANTなら、登山専門店でも「普通の登山パンツ」として並ぶレベルの見た目です。トレランに興味はあるけれど、スタイル的に一歩踏み出せなかった人にとって、その心理的ハードルを下げてくれる一本だと思います。
実際の口コミ・レビューの傾向
ネット上の評価で多い声
CROSSシリーズ全体の口コミや、CROSS RUN PANT/類似モデルに近いレビューを見ると、高評価ポイントとして多いのは次のような内容です。
- とにかく軽くて動きやすい
- ストレッチ性とフィット感のバランスが良い
- インナーボクサーのおかげで股擦れが減った
- ランとハイクを両方やる人にはちょうどよい
一方で、低評価・不満点として挙がりがちなのは、
- 防水ではないので、雨の日には別のパンツが必要
- 生地が薄めで、真冬や岩場メインには不安
- ポケットが少なく、収納力が物足りない
といった点です。
実店舗のスタッフレビューでも、「夏場はCROSS系パンツで軽快に」という紹介がされており、“山とスキーのクロスオーバー”用途で高く評価されている印象があります。
筆者の感想との一致点・違い
筆者の感想と照らし合わせると、
- 動きやすさ・軽さ・インナーボクサーの快適さ → 口コミどおり
- 防水性を求めてしまうと「思っていたのと違う」と感じる → その通りだと感じます
「生地が薄くて心配」という声については、ゴツい岩稜帯では確かに気になりますが、一般的な日本の夏〜秋の登山なら、そこまで神経質になる必要はない印象です。
口コミから見えてくるのは、次のようなユーザー像です。
-
向いている人
・ランと登山をミックスで楽しむ人
・タイツが苦手で、でも脚さばきは妥協したくない人
・低山〜中級山岳メインのハイカー -
合わないかもしれない人
・防水・防風を最優先したい人
・岩稜帯やアルパイン寄りの山行が多い人
・腰回りに大きなポケットをたくさん欲しい人
このあたりは実際の使用感ともよく一致していると感じました。
サロモン CROSS RUN PANTが合う人・合わない人
特におすすめしたい登山者像
サロモン CROSS RUN PANTを実際に使ってみて、「これは特に合いそうだ」と感じたのは次のような方です。
-
タイツが苦手だけど脚さばきは妥協したくない人
見た目・締め付け・蒸れが嫌でタイツを避けていた方にとって、「タイツ並みに動きやすいのにピタピタしない」CROSS RUN PANTは有力な選択肢になります。 -
トレランと登山を1本でこなしたい人
週末にトレランとハイクを気分で使い分けたい方には相性抜群です。走る日/歩く日のどちらにも対応し、装備を減らせます。 -
軽量ミニマル装備が好きな人
ザックの中身を軽く・シンプルにしたい方には、「軽量パンツ+レインパンツ」の組み合わせはとても相性がよいです。山でも街でも使えるので、持つ服の枚数を減らしたい人にも向いています。 -
サステナブル志向で装備を選びたい人
PFCフリー撥水など、環境負荷に配慮したパンツを選びたい方にとっても、CROSS RUN PANTは候補になりやすいモデルです。
別のモデルも検討したほうがいい人
逆に、次のようなニーズが強い方は、CROSS RUN PANT以外も検討したほうがよいと思います。
- 防水性・防風性を最優先したい人
- 荒れた岩場メイン・アルパイン寄りの山行が多い人
- 収納力の高いパンツを求めている人
そういった場合は、サロモンのOUTERPATH 2.5L Waterproofなどの防水モデルや、他ブランドの厚手アルパインパンツ、カーゴポケット付き登山パンツなども合わせて比較すると、自分のスタイルに合った1本を選びやすくなります。
まとめ ― タイツが苦手な登山者にこそ試してほしい一本
「サロモン CROSS RUN PANT 登山 レビュー」という観点でまとめると、CROSS RUN PANTは、タイツのピタピタ感が苦手な登山者にとって、「動きやすさ」と「見た目の抵抗感の少なさ」を両立させた、かなり貴重な一本だと感じました。
- タイツ並みの脚さばき
- ストレスの少ないインナーボクサー一体型
- 山から街まで使える控えめなデザイン
- 軽量で速乾・撥水性にも優れる
という要素が揃っていて、特に「タイツにモヤモヤしている方」ほど、一度試してみてほしいパンツです。
CROSS RUN PANTは、「タイツはどうしても好きになれないけれど、モサっとした登山パンツに戻る気もしない」という登山者のわがままを、かなり高いレベルで受け止めてくれる一本だと感じました。トレイルランニング由来の軽さと4ウェイストレッチのおかげで、急登でも岩場でも脚が引っかからず、終日歩いても「パンツに動きを邪魔されている感覚」がほとんどありません。
それでいて、見た目は細身の登山パンツ寄り。山小屋や下山後の街でもタイツ特有の“スポーツ感”が出にくく、インナーボクサー一体型構造が股擦れの不安も抑えてくれます。小雨や朝露なら撥水でさらっと受け流し、濡れてもすぐ乾くので、レインパンツと組み合わせた3シーズンの登山にはちょうど良いバランスです。
防水性や厳冬期の保温力、岩稜帯でのタフさでは専用パンツに譲りますが、「3シーズンの山歩き」「ときどきラン」「山と街の行き来」というリアルな行動パターンに、これほど自然になじむパンツは多くありません。タイツに抵抗があっても脚さばきは譲りたくない登山者ほど、次の一本候補として選ぶ価値があると思います。