NEMOホーネットエリートOSMO 1Pは「体力温存」志向の縦走テントか?
どんな登山スタイルに向いているか
NEMOホーネットエリートOSMO 1Pは、とにかく荷物を軽くしたい縦走登山者やバイクパッカー向けのテントです。1泊〜数泊の縦走で歩行距離を稼ぎたい方、装備全体をUL(ウルトラライト)で揃えて登山時の消耗を減らしたい方に最適です。
ダブルウォール構造で結露リスクを抑えつつ、半自立型で岩場や狭いテン場にも対応しやすいため、日本の一般的な夏山〜秋山の縦走と相性が良いモデルです。一方で、強風や雪が常態の厳冬期縦走や、グループで快適性重視のキャンプを楽しみたい方には不向きです。
テントの位置づけを一言でいうと
「ダブルウォールでこの軽さ。最低限の居住性を保ちながら体力を温存するためのソロ縦走専用機」といえるテントです。OSMO™のエコ素材やカーボンポールなど、最新のULテクノロジーを詰め込んだ“攻めた”ミニマリスト向けモデルといえます。
実測657gの衝撃:ダブルウォールでここまで軽くなる理由
スペックと実測重量
公式重量は657〜770g台で、筆者の実測では657gでした。インナー+フライのダブルウォール構成でこの重量は驚異的です。フロア面積は約2.1㎡、前室0.7㎡、室内高98cmと、必要十分な居住性も確保されています。
一般的なULソロ・ダブルウォールテントが800〜1,000g前後であることを考えると、同クラス比で100〜300gほど軽い水準です。ポール構成を最小限に抑えた半自立型レイアウトに、15Dクラスの薄手生地と細径カーボンポールを組み合わせることで、この軽さを実現しています。
OSMOファブリックの特徴:軽さと耐久性のバランス
OSMO™は100%リサイクルのナイロン/ポリエステルリップストップ素材です。シリコンコートナイロンの弱点だったUV劣化や硬化の問題を軽減しつつ、軽量性・撥水性・通気性を両立させています。
生地は薄手ですが、耐水圧はフライ2,000mm・ボトム8,000mmと、日本の3シーズン山行には十分な数値です。扱いは丁寧にした方が長持ちします。
ポリエステル混紡のため吸水・伸びが少なく、雨に濡れても生地がダレにくいのも大きなポイントです。テンションが抜けてフライが「ダルン」と垂れ下がるストレスが少なく、長雨の縦走でも張りを維持しやすい印象でした。
100%リサイクル素材を使った環境配慮型でありながら、従来のナイロンフライと同等以上の耐候性を狙った、NEMOの新世代標準ファブリックといえるでしょう。
カーボンポール採用で変わること
Nordisk製の7.3mm径カーボンポールを採用し、従来のDACポールより約100gの軽量化を実現しています。剛性は高まっていますが、折れやすさや強風時の挙動には注意が必要です。最大のメリットは、軽量化による疲労軽減です。
カーボンはアルミに比べて「しなる前にパキッといく」特性があるため、荷重が一点に集中しないような設営と、ガイラインによる荷重分散が重要になります。実際の使用感としては、通常の夏山〜秋山の風雨では十分な安心感があり、「攻めたULギアを使っている」という満足感も得られました。
パッキングでわかる「軽さ」と「かさ」のリアル
収納サイズ12×41cmはどこに収まる?
収納サイズは約12×41cmで、ロールトップパックの隙間やザック上部のストレッチポケット、サイドへの外付けなどに収まりやすい大きさです。バックパック内部にしまい込むよりは、外付けにして短い行程中でも取り出しやすくする運用が現実的だと感じました。
OSMO生地は従来のシリコンコートナイロンに比べるとややコシがあり、きっちりロールするとやや硬めに感じる一方、安定した円筒形になり、パッキングはしやすい印象です。
他のULテントとの重量・容積比較
手持ちのULテントと比較しても、収納容積は最小クラスです。一般的なULソロテントより100〜200g軽く、収納長さも短めなので、ザック内外のレイアウトの自由度が高くなります。
同社の標準モデルであるHornet OSMO 1P(約820g)と比べても100g以上軽く、Nordiskカーボンポールによる軽量化の恩恵を強く感じます。「あと100g」を削るのが難しくなってくるULゾーンにおいて、この差は歩きの軽さに確実に影響するレベルです。
フットプリント込みの「実運用重量」
テント657gに、軽量ペグ(約80〜120g)、フットプリント(約100〜150g)、予備ガイラインなどを加えると、実運用重量はおおむね900〜1,050gが目安です。フットプリントは地面からのダメージ保護とテントの寿命延長のために使用をおすすめします。
純正フットプリントにこだわらなくても、薄手のタイベックや軽量グラウンドシートをカットして使えば、重量とコストを抑えつつ、フロア耐水圧8,000mmの強みをさらに活かせます。
設営レビュー:雨が降り出す前にどこまで素早く張れるか
初回設営にかかる時間
初見でも、手順を一度覚えてしまえば5〜8分程度で設営可能です。ポールの差し込みとステーク固定の流れがわかっていれば、雨が振り出す前でも落ち着いて張ることができます。
インナーとフライを同時に扱う必要があるため、山に持ち込む前に自宅や公園などで1〜2回は設営練習をしておくと、山中でのストレスが大きく減ります。
半自立型の設営手順とつまずきポイント
半自立型のため、まずポールでテントの形を作り、その後ステークで張りを取ります。つまずきやすいのは、フライとインナーの位置合わせと、ガイラインのテンション調整です。最初はガイラインを短めに仮留めし、徐々に張りを整えるとスムーズです。
特に前室部分の張りが甘いと、フライがインナーに接触し、結露水が伝ってくる原因になります。前室側ステークの位置と角度は、少し丁寧に調整した方が安心です。
強風・悪天候を意識したペグダウンとガイライン
稜線や風の強い場所では、すべてのガイポイントを必ず張り、ペグは深く打ち込み、適切な角度を付けることが重要です。太めのロープを追加してテンションを分散させると、安定感がさらに増します。
石の多いテン場では、ペグだけに頼らず石でペグを押さえたり、岩と連結したりする工夫が有効です。これによりテント全体の安定性が上がるだけでなく、カーボンポールへの局所的なストレスも軽減できます。
室内の広さと居住性:2.1㎡は「狭い?十分?」
寝たときのサイズ感
身長170cmの筆者の場合、足を伸ばして快適に寝られる余裕があります。頭上のフライバーによって頭部空間がしっかり確保されているため、数字以上に窮屈さを感じにくい設計です。
マットの横には、着替えやスタッフサックなどの細長い荷物を置くスペースもギリギリ確保できます。1人用テントとしては「必要十分以上」の就寝性だと感じました。
前室0.7㎡に置ける荷物の量
前室にはバックパックとレインウェア、軽い調理道具程度であれば問題なく置けます。靴や濡れ物は外に出すか、前室内で圧縮してコンパクトにまとめる運用が現実的です。
クッカーを置いての簡単な湯沸かし程度であれば可能ですが、本格的な料理にはスペース的にも一酸化炭素的にも向きません。あくまで「悪天時の最低限のシェルター」として考えると、バランスが良いサイズ感です。
座って作業するときの天井高と圧迫感
天井高98cmは、座って作業する際に最低限ほしい高さです。長時間の調理や着替えはやや窮屈に感じますが、ソロ用途としては十分なレベルです。
フライバーのおかげで頭上が局所的に持ち上がっているため、真上方向の余裕は数字以上にあります。「座ってスマホや地図を見る」「装備を仕分ける」といった細かな作業は、ストレスなくこなせました。
縦走ハイクでの実戦投入レビュー
山行条件と装備の前提
2泊3日の中級レベル縦走で使用しました。天候は晴れベースに曇りが混ざり、夜間に小雨が降る程度。装備は寝袋・マット・簡易調理具などをUL構成で揃えています。
ザックのベースウェイトは5〜6kg台を目安にし、その中核ギアとしてホーネットエリートOSMO 1Pを採用しました。
行動中に「軽さ」が効いた場面
長いアプローチや標高差の大きい区間で、疲労感の違いがはっきり出ました。ザックの軽さは歩行ペースの維持や、休憩後の回復スピードに直結します。
特に2日目以降は、「前日の疲れが残りにくい」「夕方にテン場へ到着したときの余力が違う」という感覚がありました。体力温存を目的としたULテントの価値を、実際の山行で強く実感できました。
夜間の結露・換気・体感温度
OSMO生地の通気性とベンチレーションのおかげで、結露はある程度抑えられましたが、夜間の気温低下時にはフライ内側に細かな結露が発生しました。換気口はこまめに開閉することで、結露量をある程度コントロールできます。
No-See-Umメッシュにより虫はほぼ完全にシャットアウトされます。一方でメッシュ面積が広いため、薄手の寝袋との組み合わせでは冷えを感じる場合もあります。季節や標高に合わせた寝具の調整は必須です。
NEMO独自機能を使い込んで見えたメリットと小さなストレス
フライバー™で広がる頭上空間
フライバーによって頭上空間が広がり、寝返りや小物の取り扱いが楽になります。軽量テントにありがちな圧迫感が和らぎ、居住性が明確に向上します。
テント内で肘が当たったり、天井と頻繁に接触したりする場面が減るため、特に雨天停滞時のストレス軽減につながります。
ゲートキーパー™の使い勝手と注意点
片手でドアを開閉できるゲートキーパーは、実際に使ってみると非常に快適です。夜間トイレに行く際など、ジッパーを全開にしなくてもサッとドアをまとめられるのは、想像以上に便利でした。
ただし、頻繁に乱暴に扱うと摩耗が早まる可能性があるため、丁寧に扱うことをおすすめします。「細かいけれど効く」NEMOらしいギミックです。
ベンチレーションの効き方と結露具合
ベンチレーションの配置はよく考えられており、風がある日はかなり効果的に換気できます。無風時は換気口を少し開けておくことで、結露をある程度防げます。
フライとインナーのクリアランスを適切に確保し、しっかり張れていれば、OSMO生地の通気性も相まって、テント内が「ビシャビシャになる」ような結露は少ない印象でした。
耐候性と安心感:日本の山でどこまで攻められるか
耐水圧の実用感(フライ2,000mm/ボトム8,000mm)
短時間の強雨や、弱い雨が続く程度であれば十分に耐えます。フライからの浸水リスクは低めですが、長時間の豪雨や地面からの水の染み上がりには注意が必要です。
フロア耐水圧8,000mmはこの軽量クラスとしてはかなり高く、ぬかるんだテン場や水はけの悪いサイトでも安心感があります。ただし、水が流れ込むような場所への設営は避けることが大前提です。
稜線の風・雨で感じた安定感と注意点
風への耐性はステークとガイラインの固定力に大きく依存します。完全自立式ではないため、強風時は設営場所の選定と追加固定の工夫が重要です。
風を正面から受けさせるのではなく、流すようにテントの向きを調整したり、高いマットを風下側に寄せて配置したりすることで、テント全体にかかるストレスを軽減できます。
3シーズンでの使用限界ライン
春〜秋の低山〜中級レベルの縦走であれば、問題なく使用できます。冬季や暴風域、雪中行動には設計上向いていません。
特に積雪期は、生地の厚み・ポール構成・ベンチレーション配置のいずれもが「雪山用」ではないため、無理な転用は避けた方が安全です。
NEMOホーネットエリートOSMO 1Pの弱点
生地の薄さと取り扱いで注意したいこと
生地が薄手なぶん、岩や鋭利な木の根などに接触すると破損リスクがあります。就寝前に地面の小石や枝を取り除き、フットプリントを併用することを強くおすすめします。
爪や金具、トレッキングポールの先端などとの不用意な接触にも注意が必要です。「雑に扱っても平気なテント」ではないという意識を持って運用することが大切です。
半自立型ゆえのサイト選びの制約
半自立型のため、平坦で風の影響が少ない場所を選ぶ必要があり、設営場所を見極める力が求められます。
ペグが効きにくい砂地や盛り土のサイトでは、石や立木をうまく利用できる人ほど、このテントの性能を引き出しやすくなります。
79,200円という価格は高いか妥当か
UL思想を本気で取り入れたい方にとっては「投資に値する価格」といえますが、普段使いや多人数キャンプ目的だけで見ると、割高に感じるかもしれません。
同社のHornet OSMO 1P(約68,200円)よりさらに高価で、「100g軽くするために追加で1万円以上出せるか」という価値観が問われるモデルです。
向いている人・向いていない人
向いていないケース:別モデルを検討した方がいい人
- 強風の稜線や雪山に頻繁に行く人
- グループキャンプで快適性を重視したい人
- テントを雑に扱う自覚がある人(ペグダウンを省略しがち、片付けが大雑把など)
こうした方は、より堅牢でフル自立型に近いテントや、厚手生地を使ったモデルを検討した方が安心です。
向いているケース:ホーネットエリートがハマる登山者像
- 縦走で距離を稼ぎたいソロ登山者
- バイクパッキングで荷重を徹底的に削りたい人
- UL装備に投資して、長期的に体力温存を目指したい人
- 環境配慮型の最新素材(リサイクル生地)を積極的に選びたい人
こうしたニーズに当てはまる方にとっては、価格に見合うパフォーマンスを発揮してくれるテントです。
Tani OSMOや他社ULテントとの比較ポイント
NEMO内での棲み分け:Hornet Elite OSMO vs. Tani OSMO
同じNEMOのTani OSMO 1Pは約1,120gと、ホーネットエリートより400g以上重くなります。その代わり、生地はより厚手で、フル自立に近い安心感が加わります。
| モデル | 重量の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| Hornet Elite OSMO 1P | 約657〜770g | 攻めたUL・体力温存優先 |
| Tani OSMO 1P | 約1,120g | 汎用性・安心感重視の山岳テント |
「攻めた山行・体力温存優先」ならホーネットエリートOSMO 1P、「汎用性と安心感優先の山岳テント」ならTani OSMO 1Pという棲み分けがしやすい印象です。
他社ULテントとのざっくり比較
MSRやBig Agnesなど他社のULテントは、堅牢性と安定性を重視するぶん、重量がやや増える傾向にあります。「どこまで軽さを優先し、どこからを安心感に振るか」というバランスで、用途に合ったモデルを選ぶとよいでしょう。
購入前に決めておきたい「運用ルール」とカスタム案
予備ポール・補修テープ・フットプリントの考え方
予備ポールそのものは必須ではありませんが、代替素材や簡易補修キットは携行をおすすめします。修理テープや簡単な縫いキット、カーボンポール用のスリーブ、ダクトテープなどがあると、ポール破損時にも応急処置ができ、ソロ縦走でも心理的な安心感が増します。
フットプリントはテントの寿命と快適性を大きく伸ばすアイテムなので、導入を強くおすすめします。
ペグ・ガイライン交換による軽量化
ペグをチタン製に替えたり、ガイラインを細めのダイニーマ製に替えたりすることで、数十グラム単位の軽量化が可能です。ただし、強度とのバランスには注意してください。
ガイラインを反射材入りの軽量タイプに変更すると、夜間の視認性が上がり、ロープにつまずくトラブル防止にもつながります。
縦走装備全体を見直して「体力温存セット」を組む
テントだけでなく、寝袋・マット・クッカー・衣類などを含めてUL化することで、総荷重を大きく削減できます。ホーネットエリートOSMO 1Pは、その「核」となるギアとして機能します。
ベースウェイトを7kgから5kgに減らすことができれば、疲労の軽減だけでなく、「一歩目を踏み出す気力」や「もう少し先まで行こうと思える余裕」が生まれ、山行の質そのものが変わってきます。
よくある疑問Q&A
Q. ソロだけど2Pと迷う。どちらがいい?
ソロで軽さを最優先するなら1Pがおすすめです。快適性や荷物置き場の広さを重視するなら2Pを検討してください。
1Pと2Pではおおよそ300g前後の重量差が出ます。「毎歩300g余分に背負い続けるか、夜の快適性をとるか」というトレードオフになります。
Q. 冬の低山でも使える?厳冬期は完全NG?
厳冬期や積雪期の使用は前提外で、基本的には春〜秋の3シーズン運用が前提のテントです。
雪のない冬の低山であっても、強風や放射冷却で厳しいコンディションになる場合は、より堅牢な4シーズン寄りのテントを選んだ方が安全です。
Q. 初めての登山テントとして選んでも大丈夫?
テントの扱いにある程度慣れており、設営やサイト選びをしっかり学ぶ意欲があるなら「アリ」です。一方で、初めてのテントで失敗を少なくしたい場合は、もう少し安定志向のモデルをおすすめします。
ULテント全般にいえることですが、「軽さ=許容すべき制約が多い」という側面があります。この前提を理解したうえで選ぶと、購入後に後悔しにくいはずです。
まとめ:NEMOホーネットエリートOSMO 1Pはどんなテントか
NEMOホーネットエリートOSMO 1Pは、「歩き続けること」に重きを置いたソロ縦走者向けのテントだと感じました。ダブルウォールで実測657gという軽さは、1泊だけでなく、2泊3日、3泊4日と日数が伸びるほど効いてきます。
一方で、薄手生地・半自立型・前室のコンパクトさなど、扱いにはコツが必要です。テン場選びやペグダウンを丁寧に行い、フットプリントや補修キットを含めた「運用ルール」を自分の中で決めておくことで、はじめてこのテントの本領が引き出される印象でした。
「多少の不便さや気を遣う手間より、とにかく荷物を軽くして長く歩きたい」「UL的な道具選びを通して、山行スタイルそのものを見直したい」――そんな考えに共感できる方には、価格に見合うだけのリターンを返してくれるギアです。
逆に、オールラウンドな安心感や快適性を求めるなら、同じNEMOのTani OSMOや、他社のやや堅牢寄りのULテントの方が、気持ちよく使える場面も多いはずです。
自分がどんな山を、どんなペースで、どんな気分で歩きたいのか。そこをはっきりさせてから選ぶと、ホーネットエリートOSMO 1Pが「ただ軽いテント」なのか、「山行スタイルを一段押し上げてくれる道具」なのかが、自然と見えてくるはずです。