ミレー「サースフェー NX 30+5」とは?基本スペックと立ち位置
日帰り〜小屋泊までカバーする30+5Lという絶妙サイズ
ミレー「サースフェー NX 30+5(W)」は、容量30L+拡張5L=最大35Lクラスの、いわゆる「日帰り〜小屋泊ど真ん中」サイズの登山ザックです。
- 日帰りの低山〜夏山:余裕あり
- 春〜秋の1泊小屋泊:ちょうどいい
- 夏のミニマムテント泊:工夫すればギリギリいける
というボリューム感で、「1つでかなりのシーンをカバーしたい」という人向きのサイズ感になっています。
メインコンパートメントは“ほぼ筒型”で縫い目を減らした設計のため、同容量帯のザックよりも「思ったより入る」「パッキングしやすい」と感じる人が多いはずです。荷物を縦にきれいに積み上げやすく、無駄なデッドスペースが出にくい構造になっています。
重量は約1470〜1500g前後。30L台としては“超軽量”ではありませんが、レインカバー標準装備、しっかりした背面パネルとヒップベルト、多彩なポケットを考えると、実用的なバランス寄りの軽さです。同クラスの中では「軽量寄りのしっかり系」というポジションで、ペラペラのULザックでは不安な人にちょうど良いラインです。
女性向けモデル(W表記/SLモデル)では、
- 背面長をやや短めに設定
- 肩幅や骨盤形状を女性体型に合わせて調整
- ヒップベルトのカーブも女性想定で設計
といったフィット調整がされています。ミレーは昔から女性用ハーネス設計に定評があり、サースフェー NX 30+5(W)も「単に小さいサイズ」ではなく、女性の肩幅・胸まわり・骨盤形状を前提とした立体裁断になっているため、小柄な男性を含め“合う人にはかなりハマる”背負い心地になっています。
本格登山向け30L台として、ミレー定番シリーズの中核を担うモデルで、「最初の1本」として選ぶユーザーも多い容量と設計です。
旧サースフェーとの違いと「NX」への進化ポイント
サースフェーシリーズ自体はミレーのロングセラーで、「NX」はそのリニューアル世代です。主な進化ポイントは次のとおりです。
軽量化と撥水性が向上した素材
旧モデルより軽量かつ高撥水な生地へアップデートされています。
- メイン:コーデュラオックス210Dナイロン
- 一部:30Dバリスティックナイロン
- 表面:シリコン耐久撥水加工
- 耐水圧:1500mmクラス(本体生地の目安)
単純な生地厚だけでなく、耐水圧1500mmクラスを確保しつつ軽量化を図っており、「山でガシガシ使える強さ」と「日帰りでも持ち出しやすい軽さ」の両立を狙った仕様です。
撥水性能の底上げ
「小雨程度ならレインカバー不要」と言えるレベルまで保水を抑える方向に進化しています。シリコン系の撥水処理により、水滴が玉のように転がり落ちやすくなり、旧モデルで感じやすかった「じわじわ重くなってくる」感覚がかなり軽減されています。
背面システム「SAAS FEE BACK」のブラッシュアップ
成形パネルとフォームの組み合わせを見直し、通気性とフィット感のバランスを調整しています。旧サースフェー譲りの安定感を残しつつ、背中に当たるフォームパターンやメッシュ配置を微修正して、「密着はするけれどベタつきにくい」背負い心地に進化しました。
デザインとポケット構成の再整理
筒型メインコンパートメント+外ポケット類を再構成し、行動中の使いやすさに寄せた形状になりました。
- サイドからボトルを出し入れしやすいサイドポケット
- レインウェアなどを突っ込みやすい大型フロントポケット
などが使いやすくなり、「立ったままボトルに手が届く」「レインウェアを前面に素早く収納できる」といった実用面が明確に向上しています。
女性向けフィットモデルの明確化
W/SL表記のモデルとして、女性体型に合わせた背面長とハーネス形状を採用。以前はユニセックス寄りだったサイズ展開が、NX世代では女性専用の背面長設計やショルダー形状が明記され、「店頭で選びやすい」「ネットでも自分向けか判断しやすい」ラインアップになりました。
旧サースフェーから乗り換えると、
- 軽くなった
- 生地の水弾きが良くなった
- 背面と腰の当たりが少し洗練された
という印象になりやすく、コンセプトはそのままに、軽量・撥水・女性フィットといった“今どきのトレンド”に合わせて細部を現代的にアップデートしたモデルと言えます。
競合(グレゴリー/ノースフェイスなど)との比較上の立ち位置
30〜35Lの「日帰り〜1泊」帯は、各社の主力がひしめく激戦区です。主なライバルは次のあたりです。
- グレゴリー:ズール30/ジェイド28〜30
- ザ・ノース・フェイス:テルス35
- マムート:リチウム30
- カリマー:ridge 30+
- ドイター:フューチュラ30前後
この中でのサースフェー NX 30+5の立ち位置を一言で言うと、
「軽量すぎず重装備すぎず、撥水性と使い勝手に寄せた“万能タイプ”」
というイメージです。
- グレゴリー:ふかふか感・包まれ感のある背負い心地でトップクラス
- ドイター:通気性特化のメッシュ背面で、夏の蒸れに強い
- ノースフェイス:ライトでシンプル、価格もやや抑えめなことが多い
これに対してサースフェー NXは、
- 高い撥水性(+レインカバー標準装備)
- 日帰り〜小屋泊までの使いやすさ
- ミレーらしいキビキビしたフィット感
といった点で勝負しているモデルです。
特に、
- 撥水+レインカバー標準装備
- 山小屋泊〜軽めの縦走にも対応できる汎用性
- 女性向けフィットモデルの充実
は、比較記事でも強みとしてよく挙げられています。
価格帯はおおむね2万〜3万円前後で、同クラスの欧米ブランドと横並び。突出して高価ではない一方、素材や背面システムは上位クラスの仕様なので、「コスパ重視で最安を狙う」というよりは「長く使える定番を一本持ちたい」人向けの選択肢と言えます。
「神アップデート」その1:ここまで進化した撥水性
コーデュラ×シリコン耐久撥水の実力
サースフェー NX 30+5でまず注目したいのが、生地の構成と撥水性能です。
- メイン素材:コーデュラオックス210Dナイロン
- 一部パネル:30Dバリスティックナイロン
- 表面処理:シリコン耐久撥水加工
- 耐水圧:1500mmクラス(本体生地の目安)
コーデュラはアウトドアでは定番の「タフ系ナイロン」で、擦れに強く、岩や枝にこすっても簡単には破れにくい素材です。ここにシリコン系の撥水処理を施すことで、
- 水滴が玉のように転がり落ちる
- 生地が水を吸って重くなりにくい
- 乾きが早い
といったメリットがあります。
さらに、ボディのパネル構成も「縫い目を減らす」「水がたまりやすい切り替えを少なくする」方向で設計されており、素材スペックだけでなく構造面の防水性も高めています。
完全防水ザックではなく「撥水+レインカバー」で運用する前提ですが、その「撥水」のレベルが、旧世代や一般的なDWR(耐久撥水)より1段階強いと感じる人も多いはずです。都市部での短時間の雨なら、普段使いリュックとしても安心して使える程度には水を弾いてくれます。
小雨〜一時的な強雨までの「レインカバー無し」耐性
実際の山行での感覚としては、次のようなイメージです。
- 小雨:レインカバーなしでほぼノーストレス
- 通り雨(10〜20分程度のやや強い雨):状況次第では許容範囲
- 本降りが続く:レインカバー必須
表面撥水がしっかり効いている間は、小雨なら水がスルスル落ちて、生地が濡れた感じになりにくいです。ショルダーハーネスやヒップベルトも同系統の素材のため、同じように水をかわしてくれます。
一方で、
- 縫い目のシーム処理は「完全防水」レベルではない
- 背面側は通気性を優先した構造で、ここはどうしても濡れやすい
といった点があるため、「一日中本降り」の予報なら、最初からレインカバーを装着してしまうのが現実的です。レインカバーは標準装備でボトムの専用ポケットに収納されているので、「別売りを買い足す必要がない」「忘れ物のリスクが少ない」という運用上のメリットもあります。
霧雨・ガスの中での撥水性と快適さ
「一日中ガスの中を歩く」ような、湿度100%の霧雨コンディションは、このザックの撥水性がもっとも活きるシチュエーションです。
- 霧雨+弱い小雨が一日中断続的に続く
- レインウェア着用レベルだが、土砂降りではない
この状態でレインカバー無しで歩いても、
- メイン荷室の収納物:
ドライサックやジップロックを軽く併用しておけば、中身がしっとり濡れることはほぼない - 外ポケット類:
メッシュポケットの中身は濡れるが、フロントポケットの中は「やや湿ったかな?」程度
という印象です。
「レインカバーをかけるほどではないが、弱い雨が続く」状況だと、通常のザックはじわじわ浸みてきて不快になりがちですが、サースフェー NXはそこをかなり粘ってくれます。その結果、「レインカバーを出したり仕舞ったり」を繰り返す回数が減り、行動のリズムを崩さずに済むのが大きな利点です。
結露・汗染み・背面側の濡れ方
見落としがちなのが、「自分の汗+結露」での濡れ方です。
- 背面パネル
- ヒップベルトまわり
- ショルダーハーネス裏側
はいずれもメッシュとフォーム構造になっているため、汗を吸って多少は湿ります。ただし、
- フォーム自体が水を吸い込みすぎない
- 表面生地の撥水によって汗シミが広がりにくい
といった点から、「べちゃっ」とした不快感はかなり抑えられています。
とはいえ背中側は身体に密着するため、完全にドライというわけにはいきません。盛夏やハードな登りでは、
- バックパック側の通気性だけに頼らず、ベースレイヤーの素材選びを重視する
- 行動中にベンチレーションやペース調整をこまめに行う
といった工夫のほうが、実際の快適さには効いてきます。サースフェー NXの背面は「通気性特化」ではなく「通気性と荷重安定のバランス型」なので、ウェアとの組み合わせを前提に汗対策を考えると、より快適に使えます。
「神アップデート」その2:肩ポケットがもたらす快適さ
新設ショルダーポケットのサイズ感と入るもの
NX世代で「地味に効く」と感じるのが、ショルダーハーネス部のポケットです。サースフェー NX 30+5(W)では、
- 片側にストレッチメッシュまたはファスナー付きの小ポケットを配置
- サイズ感の目安:
- 5〜6インチクラスのスマホ(薄めのケースなら収納可)
- ジェル・羊羹・カロリーメイトなどの行動食1〜2個
- リップクリームや小型の日焼け止め
- 薄型サングラスケース(モデルや形状による)
といったものが入るスペースになっています。
「大きなボトルが入る」ほどではありませんが、行動中によく触る小物をまとめておくにはちょうどいい大きさです。従来はサードパーティ製のショルダーポーチを追加していたようなニーズに、標準機能でかなり応えてくれる作りになっています。
スマホ・行動食・サングラス収納で感じるメリット
ショルダーポケットにスマホや行動食を入れておくと、登山中の「ちょっとした面倒」がかなり減ります。
- 写真を撮りたいとき:ザックを降ろさずにすぐ撮影できる
- 地図アプリを確認したいとき:立ち休憩でさっとチェック可能
- ハンガーノック対策:行動食を片手で取り出せる
これをヒップベルトポケットやトップリッドに入れていると、
- 腰をねじる
- 荷重が偏る
- 一度ザックを下ろしてから取り出す
といった動きが増えてしまいます。軽くて使用頻度の高いものを「肩に集約する」スタイルは、歩きのリズムを崩さずに行動できる点が大きなメリットです。
寒い季節には、
- こまめなグローブの脱ぎ着
- ティッシュや目薬をサッと取りたい場面
も増えますが、そうした細かい出し入れも肩まわりに集約することで、「行動をいちいち中断する」感覚をかなり減らせます。
ヒップベルトポケットの存在意義が変わる?
実際に使ってみると、「ヒップベルトポケットって、必須じゃないかも?」と思う瞬間があります。
- ショルダーポケット:スマホ+行動食+リップなど
- サイドメッシュ:ペットボトル/ソフトフラスク
- ヒップベルトポケット:地図、コンパス、小物(もしくは空のまま)
という配置にすると、腰をひねってヒップポケットを探る動作自体がほぼ不要になります。
ヒップベルトポケットは、
- 重いものを入れると歩行時に揺れやすい
- 体をひねったときに引っかかる感覚が出る
といったデメリットもあるため、小物を肩に集約するスタイルは、歩きのリズム維持という点でも優秀です。
ミレー自身も、ヒップベルトポケットやフロントポケットに加えてショルダーポケットを配置することで、「身体の前〜横のどこからでもアクセスしやすい」ギアエコシステムを想定しています。行動中にほとんどメイン荷室を触らずに済むパッキングを提案していると言えます。
岩場・鎖場・樹林帯でのアクセス性と安全面
岩場や鎖場、急な樹林帯では、
- 片手を離したくない
- バランスを崩すような動作を減らしたい
という状況が多くなります。
ショルダーポケットは、
- 片手をショルダーストラップから離さず
- 体の中心線近くで
- 目線の範囲内で
スマホや行動食を出し入れできるため、安全面でもメリットがあります。
注意したいのは、
- スマホを出したまま鎖場に入らない
- 口が浅い/ファスナーなしのポケットには、落下すると困るものを詰め込みすぎない
といった基本的なリスク管理です。特に高所での写真撮影時は、「撮り終わったら必ずポケットに戻す」「手に持ったまま歩き出さない」といったマイルールを決めておくと安心です。
背負い心地レビュー:SAAS FEE BACKの実力
女性向け設計(W表記)で変わるフィット感
サースフェー NX 30+5(W)の背面システム「SAAS FEE BACK」は、女性向けに次のポイントがチューニングされています。
- 背面長:やや短め(目安43cm)
- ショルダーハーネス:カーブをきつくし、首周りへの干渉を軽減
- ヒップベルト:骨盤の位置にフィットしやすい角度で設計
これにより、
- 肩の食い込みが和らぐ
- チェストストラップを締めても首・鎖骨まわりが苦しくなりにくい
- 腰骨の上にしっかり荷重が乗る
といったフィット感になりやすいです。
ベルクロ式で背面長を微調整できるモデルも多く、
- 身長155〜165cm前後の女性
- 上背が短めの男性
あたりは、かなりジャストフィットを狙えます。登山用ザックでは「背面長が合っているか」が疲労感に直結するので、この調整幅の広さは購入前に必ず確認しておきたいポイントです。
腰荷重と肩への食い込み具合(時間・重量別)
実際の背負い心地を「時間」と「重量」で分けると、目安としては次の通りです。
- 日帰り:装備7〜8kg/4〜6時間行動
→ 肩への食い込みはほぼ気にならず、腰中心で快適。 - 1泊小屋泊:装備9〜11kg/6〜8時間行動
→ 行動後半にやや肩まわりの疲れは出るが、ヒップベルトで十分支えられる範囲。 - それ以上(テント泊装備12kg〜):
→ 不可能ではないが、「本来このザックの守備範囲ではない」と感じやすいゾーン。
グレゴリーのような“ふかふか系サスペンション”と比べると、
- ミレーはやや「シャキッと」した背負い心地
- 動いた時に荷重の追従がダイレクト
という特徴があります。ソファのような柔らかさを期待すると「ちょっと硬い」と感じるかもしれませんが、その分、岩場や不整地での安定感には優れています。「ザックだけ遅れて振られる」「荷重がワンテンポ遅れて付いてくる」といったストレスが少ないのがメリットです。
盛夏の日帰りでの背中の蒸れ具合
SAAS FEE BACKは「通気性とフィット感のバランス型」です。
- ドイターなどの完全メッシュ背面のような“スースー感”まではいかない
- ただし背中にぴったり張り付くわけではなく、フォームの凹凸とメッシュで汗抜けを確保
盛夏の日帰りでしっかり汗をかく状況でも、
- シャツがぐっしょり貼り付く
- 背中だけ異常に暑くて不快
というレベルになりにくく、「夏に背負うトレッキングザックとしては十分許容範囲」という印象になりやすいです。
通気性だけを最優先するならドイターなどのメッシュ背面が一歩上ですが、その分重心が身体から離れやすく、岩場やバランスのシビアな場面ではサースフェーのような「身体に近い背負い」が安心感につながります。アルプスの岩稜帯や細い稜線など、風とバランスがシビアな場面に行く人ほど、サースフェーの設計思想と相性が良いと言えます。
グレゴリー/ドイター派は乗り換える価値があるか
- グレゴリー派の人
→ 「クッション厚め・包まれ系」の背負い心地が好きな場合、その一点だけを期待して乗り換えると違和感があるかもしれません。ただし、撥水性や軽さ、ポケット配置を重視するなら、サブザックとして「使い分け」目的で導入する価値は十分あります。 - ドイター派の人
→ メッシュ背面の通気性はドイターに軍配が上がります。一方で、サースフェー NXは重心が身体に近くアルパイン寄りの安定感があるため、「岩場が多い山」「風にあおられる稜線」が好きな人にはかなり合います。
総じて、「背負い心地の柔らかさだけがすべて」という人向きではなく、
「総合バランス+撥水性+実用性」を重視する人に刺さるザック
と言えます。レビューでも「グレゴリーほどのクッション性はないが、軽さと収納力・使いやすさのバランスが良い」「ミレーのキビキビした背負い心地が好き」といった声が目立ちます。
収納力と使い勝手:30+5Lを最大限活かすパッキング術
2気室構造と拡張+5Lの使い分け方
サースフェー NX 30+5は、
- 上部:メインコンパートメント
- 下部:セパレートされたボトムコンパートメント(ジッパーで1気室化も可能)
という2気室構造で、トップ側の拡張で+5L分の余裕が出ます。
登山スタイル別の使い方イメージは次の通りです。
日帰り登山
- 下段:レインウェア、非常用保温着(薄手ダウンなど)
- 上段:フリースなどのレイヤリング、食料、行動食、予備水
- 拡張部分:帰りに増える荷物(パンフレットやお土産など)
1泊小屋泊
- 下段:着替え一式、シュラフカバー(使う人)、インナー類
- 上段:レインウェア、防寒着、食料、洗面道具など
- 拡張部分:初日の食料や水(帰りに体積が減るもの)
夏のミニマムテント泊
- 下段:軽量シュラフ(またはインナー)、着替え
- 上段:1〜2人用の軽量テント、マット、食料、クッカー類
- 拡張部分:食料や水を多めに積むときの余裕分
「下に動かしたくないもの・夜まで触らないもの」「上に行動中に出し入れするもの」と整理すると、30+5Lをムダなく使いやすくなります。
また、サースフェー NXシリーズはハイドレーションスリーブやホース出口も備えたモデルが多く、水の管理も「内部+サイド」で柔軟に行えます。水をどこにどれだけ持つかを事前に決めておくと、2気室+拡張のメリットを最大限に引き出せます。
サイド&フロントポケット、ヒップベルトポケットの実用性
NX 30+5のポケット配置はかなり実用的です。
- サイドメッシュポケット:
- 500〜750mlのペットボトルやソフトフラスクを収納可能
- 立ったまま出し入れしやすい角度
- フロント大型ポケット:
- レインウェア上下
- グローブ、地図、薄手防寒着
- モデルによってはヘルメットも収納可能
- ヒップベルトポケット:
- 行動食、ティッシュ、リップなど(ショルダーポケットと役割分担も可)
フロントポケットには「濡れてもOKなもの」「少し濡れても許容できるもの」を入れておくと、メインコンパートメントを汚さずに運用できます。雨の中でレインウェアを脱ぎ着するときも、濡れたウェアをまずフロントに一時避難させてから、中身を落ち着いて整理し直せるので便利です。
1泊小屋泊・夏テント泊ミニマム装備のパッキング例
1泊小屋泊(夏〜秋)例
- 下段:
- 着替え(インナー上下、ソックス)
- タオル類、アメニティポーチ
- 上段:
- レインウェア上下
- 薄手ダウン or 厚手フリース
- 行動食+行動中の昼食
- ヘッドライト、救急セット、バッテリーなどの小物
- フロントポケット:
- レインウェア(天候次第でメインから移動)
- 地図、グローブ、ゴミ袋
- サイドポケット:
- 水(ペットボトル or ソフトフラスク)
- 折りたたみ傘(雨予報時)
ミニマム夏テント泊(ソロ・1泊想定)
- 下段:
- コンパクトな3シーズン用シュラフ
- 着替え
- 上段:
- 1人用軽量テント
- マット(薄型〜インフレータブルは外付けも可)
- クッカー&バーナー&燃料
- 食料(1泊2日分)
- フロントポケット:
- レインウェア
- グローブ、タオル
- サイド:
- 水2L前後(ボトルとハイドレーションの組み合わせなど)
ギア選びとパッキングスキルは必要ですが、「NX 30+5でテント泊もやりたい」という人でも、UL寄りの装備を揃えれば現実的な範囲に入ってきます。ミレー自身もサースフェーを「日帰り〜縦走まで幅広く対応できる汎用パック」と位置づけており、上手に詰めれば1泊テント泊までこなせるポテンシャルがあります。
行動中の「ストレスゼロ」に近づける小ワザ
- ロードリフターストラップ(荷重調整ストラップ)をこまめに調整する
→ 登りでは締めて重心を近づけ、下りや暑いときは少し緩めて通気性を確保。 - ウエストベルトの高さを「腰骨ジャスト」に合わせる
→ これだけで肩の疲れはかなり軽減されます。 - よく使うギアは「肩・胸・腰の三角形の中」に集約する
→ ショルダー・ヒップ・チェストまわりに小物を集めると、ザックを下ろす回数が大きく減ります。
さらに、
- 下部コンパートメントのジッパーを開けて1気室にするか、分割のまま使うかを山行スタイルに合わせて選ぶ
- トレッキングポールホルダーやアイスアックスループなどの外付けポイントを、どこまで常用するか決めて荷物の振れ方を最適化する
といったセッティングを試してみると、サースフェー NX 30+5のポテンシャルをさらに引き出せます。
防水・撥水装備としてのトータル評価
レインカバーあり/なしの使い分け目安
次のような基準で使い分けると快適です。
- レインカバーなしでOKな状況:
- 予報が「一時的なにわか雨」レベル
- 小雨〜霧雨がメインで、本降りは短時間
- 行動時間が短めの日帰り
- レインカバーを最初から使うべき状況:
- 一日中ぐずついた天気の予報
- 午後から前線通過など、本降りが見込まれる日
- テント泊や2泊以上で荷物が多く重いとき
基本は「濡れそうなら早めにレインカバー」です。サースフェー NXの撥水は強力ですが、生地が長時間濡れ続けると冷えや重量増につながります。
ミレー純正レインカバーはザック形状に合わせてフィットするように設計されているため、風でバタつきにくく、強雨時の安心感も高いです。汎用カバーを後付けするより、「付けっぱなしでも行動しやすい」という点は純正ならではの利点です。
濡らしたくないギアの収納場所とパッキングのコツ
特に濡らしたくないものは次の3つです。
- ダウンやフリースなどの保温着
- 電子機器(予備スマホ、バッテリー、カメラ)
- 寝具系(テント泊時のシュラフやインナー)
これらは、
- メインコンパートメントの中心〜背中側にまとめて配置する
- 軽量ドライバッグやスタッフサックに入れて二重化する
- フロントやサイドポケットには入れない
というルールを徹底すると安心です。
一方で、多少濡れても問題ないもの(レインウェア、タオル、ゴミ袋など)は、フロントやサイドポケットに出しておくとパッキング全体がすっきりします。
サースフェー NX 30+5は、「撥水ボディ+レインカバー+ドライバッグ」の三段構えにすることで、ほとんどの山行で浸水ストレスから解放される構成にできます。
撥水性能を長持ちさせるメンテナンス方法
シリコン耐久撥水は強力ですが、皮脂や泥汚れの蓄積で性能は徐々に落ちていきます。長く性能を保つには、次のようなケアがおすすめです。
- 泥・砂汚れは山から帰ったら早めにブラシやシャワーで軽く落とす
- 洗濯機は避け、ぬるま湯+中性洗剤で手洗い → しっかりすすぎ → 陰干し
- 強くこすらず、汚れ部分だけをスポンジでやさしく洗う
- 撥水が落ちてきたと感じたら、アウトドア用撥水スプレーを追加する
さらに長期保管時には、
- 直射日光を避けた風通しの良い場所で保管する
- 圧縮したままにせず、ある程度ふくらみを保って収納する
といった点に気をつけると、コーデュラやバリスティックナイロンの劣化を抑えやすくなります。
「ここはイマイチ」も正直レビュー
重量1470g前後はUL派には重め
サースフェー NX 30+5の重量は約1.5kg。最近のUL系ザック(600〜900g)と比べると、明らかに「重装備側」です。
- しっかりした背面パネル入り
- ヒップベルトのクッションも厚め
- ポケットやストラップ類が豊富
と、「快適性と耐久性を優先した結果の重さ」であり、UL派が求める“削ぎ落としたシンプルさ”とは方向性が違います。
「とにかく軽さ優先でロングトレイルを歩きたい」という人には、正直ほかのUL系ザックをおすすめします。
一方で、
- 初心者〜中級者で安心感を重視したい人
- 岩場や藪漕ぎがありうる山域に行く人
- 年に数回テント泊も視野に入れている人
にとっては、この重さは「快適さと安心感の対価」として納得しやすいラインです。30〜35Lクラスで1.5kg前後というのは、背面フレーム入りトレッキングザックとしては標準的な重さで、「特別重いわけではないが、超軽量でもない」という位置づけです。
生地の薄さ・中身透けと耐久性のバランス
一部カラー(特にホワイト系やごく薄い色)では、
- 中身のシルエットがやや透けて見える
- 見た目として生地が薄く感じ、不安に思う
という声もあります。
実際にはコーデュラ210D+30Dバリスティックで、数値的には十分な耐久性がありますが、
- ゴツゴツした岩稜帯で頻繁に擦る
- 金属製ギアをそのまま外ポケットに入れる
といった使い方をすると摩耗は早まります。
気になる人は、
- 岩稜帯中心にガシガシ使うなら、やや濃いめのカラーを選ぶ
- テントポールやアイゼンなど鋭利なものは、ザック内部でもカバーに入れる
といった工夫をすると安心です。
なお、UL系の極薄30Dナイロンザックと比べれば、サースフェー NXは「安心できる厚み」がある部類なので、一般的な縦走登山や標準的な岩場レベルであれば、耐久性面で大きな不安は感じにくいはずです。
体型・好みによっては合わない可能性も
次のようなケースでは、体型や好みによってフィットしない場合があります。
- 背面長
→ Wモデルは背面が短めなので、身長170cm以上で上背が長めの人は背面が足りない感覚になることがあります。 - ショルダーハーネスの角度
→ 肩幅が広い人や胸板が厚い人は、チェストストラップ周りの収まりが合わない場合があります。 - 背負い心地の「硬さ」
→ グレゴリーの柔らかいクッション性が好きな人には、ミレーのシャキッとした背負い心地が「硬く」感じられることがあります。
このあたりはスペックだけでは判断しづらく、実際に背負ってみての好みが大きく影響します。可能なら店頭で試着し、できれば重りを入れて10kg近い状態でフィット感とバランスを確かめておくと失敗が減ります。
どんな登山者に「サースフェー NX 30+5」をおすすめしたいか
初めての本格登山ザックとして「アリな人」「ナシな人」
おすすめできる人
- 日帰り〜1泊小屋泊をメインに考えている
- レインカバー標準装備&撥水性の高いザックが欲しい
- 女性向けのフィット感(Wモデル)を重視したい
- 軽さよりも、背負い心地と耐久性を優先したい
向いていない人
- とにかく軽さ最優先でULギアを集めている
- 2〜3泊以上のテント泊をメインにする予定
- ドイターのようなメッシュ背面の「強い通気性」を求めている
特に「初めてのちゃんとした登山ザック」で迷っている人にとって、サースフェー NX 30+5は、
- 信頼できるブランドの定番シリーズ
- 日帰り〜小屋泊まで幅広く対応できる容量
- 撥水+レインカバー+しっかりした背面
という3点がそろっており、「これ一つあればとりあえず大丈夫」という安心感を得やすいモデルです。
日帰りメイン/小屋泊メインでの相性
- 日帰りメインの人
→ 30+5Lは「やや余裕がありつつもオーバースペックではない」絶妙なサイズ感です。行動食や防寒着を多めに持ちたい人には特に相性が良い容量です。 - 小屋泊メインの人
→ 1〜2泊の小屋泊なら十分に対応可能です。荷物が多めの人は+5L拡張を前提にパッキングすれば、快適に使えます。 - テント泊メインの人
→ 夏のミニマム1泊テント泊なら工夫次第で対応できますが、テント泊が主目的なら40〜50Lクラスの別ザックを検討したほうが余裕があります。
「日帰りも小屋泊も行きたいし、たまにテント泊も」という“何でもやりたい派”にとって、NX 30+5はベースギアとして非常に使い回しがしやすく、今後ほかの容量のザックを買い足した場合でも「サブ〜中核」として長く活躍してくれるサイズ感です。
旧サースフェー/他社30Lクラスから買い替えるべきケース
買い替えを検討したいケース
- 旧サースフェーの撥水が落ちて、雨の日の使用に不安が出てきた
- 肩や腰まわりのクッションがヘタり、長時間の山行で疲れが増してきた
- スマホや行動食の出し入れをもっとラクにしたい(ショルダーポケットが魅力的に感じる)
- ユニセックスモデルから女性向けフィットモデルに乗り換えたい
まだ様子見でよいケース
- 現在のザックのフィット感に大きな不満がない
- 雨の日は必ずレインカバーを使っており、撥水性へのこだわりが少ない
- ポケット配置に特別なストレスを感じていない
つまり、「撥水性」「ポケット配置」「フィット感」のいずれかに強い不満があるなら、サースフェー NX 30+5への乗り換えはかなり有力な選択肢になります。
特に女性ユーザーで、
- ユニセックスモデルだと肩や首が当たる
- 腰にうまく荷重が乗らない
と感じている場合、W/SL表記のモデルに変えることで、背負い心地の差を大きく実感しやすいはずです。
購入前チェックリスト:後悔しないための最終確認
店頭試着で必ず確認したい3つのポイント
- 背面長とフィット感
- ショルダーハーネスの付け根が肩のカーブに自然に沿っているか
- 腰ベルトが腰骨の上にしっかり乗っているか
- チェストストラップを締めたとき、首や鎖骨まわりが苦しくないか
- 荷重時のバランス
- 店の重り(砂袋など)を入れて10kg近くまで試し背負いしてみる
- 前後左右に体を揺らしたとき、ザックが過度に振られないか
- 肩や腰に「痛いポイント」がないか
- ポケットの手の届きやすさ
- ショルダーポケットに手を伸ばし、スマホを出し入れしてみる
- サイドポケットのボトルを、背負ったまま抜き差しできるか
- ヒップベルトポケットを、体を大きくねじらずに開閉できるか
この3点をチェックして問題なければ、実戦投入しても大きな後悔は出にくいはずです。可能なら店内で少し歩いたり階段を上り下りして、「動いてもズレないか」「腰と肩の荷重バランスが自然か」を確認しておくとより安心です。
カラー・サイズ選びと通販時のコツ
カラー選びのポイント
- 岩や泥汚れが気になる人:濃色(ネイビー、ブラック、ダーク系)
- 夏でも見た目を軽くしたい人:中明度のカラー
- 中身の透けが気になる人:ホワイト系・極薄色は避ける
サイズ(背面長)選びのポイント
- W/SLモデル:身長155〜165cm前後の女性に特にフィットしやすい
- 背が高い人や男性:ユニセックスモデルとの比較も検討する価値あり
通販での失敗を減らすコツ
- メーカー公式サイトのサイズチャートを必ず確認する
- 可能なら、手持ちのザックや店頭で自分の適正背面長を一度測っておく
- 返品・交換ポリシーが柔軟なショップを選ぶ(サイズが合わなかったときの保険)
加えて、通販で購入する場合は「自分と身長・体型が近い人のレビュー」をチェックしておくと、背負い心地のイメージがかなり掴みやすくなります。
一緒に揃えたい、相性抜群の周辺ギア
サースフェー NX 30+5と組み合わせると快適度が上がるギアは次の通りです。
- 軽量ドライバッグ(5〜10L)
→ ザック本体の撥水と組み合わせることで、雨天時の安心感が一気にアップします。 - ソフトフラスク or ハイドレーション
→ サイドポケットや内部スリーブと組み合わせると、水分補給の手間が大きく減ります。 - 軽量レインウェア
→ フロントポケットに常駐させておける薄手レインは、NXの収納設計との相性が抜群です。 - コンパクトダウン or 化繊ジャケット
→ 収納性の高い防寒着は、30+5Lの容量を有効活用するうえで非常に優秀です。 - 追加のショルダーポーチ/チェストポーチ
→ ガジェット類をさらに増やしたい場合でも、ショルダーハーネスに追加装着しやすい設計です。
これらを組み合わせることで、“かゆいところに手が届く”万能ザックとしてのサースフェー NX 30+5のポテンシャルを、より引き出せます。ミレーのほかの軽量ギア(レインウェアやインサレーションなど)と合わせてブランドで揃えると、色味やデザインにも統一感が出て、山行全体のモチベーションアップにもつながります。
まとめ:サースフェー NX 30+5は「ちょうどいい一本」になり得るか
サースフェー NX 30+5は、「ありそうでなかったちょうどいい一本」という印象のザックでした。30+5Lという容量は、日帰りから1泊小屋泊、工夫した夏のミニマムテント泊まで幅広く対応しつつ、背面フレームと厚めのヒップベルトでしっかり荷重を受け止めてくれます。
NX世代で特にうれしいのが、強化された撥水性とショルダーポケット。小雨や霧雨程度ならレインカバーを出さずに歩ける場面が増え、スマホや行動食を肩まわりに集約できることで、立ち止まる回数もぐっと減りました。
一方で、1.5kg前後という重量や、シャキッとした背負い心地は好みが分かれるところ。UL的な軽さやふかふか系の背負い心地を求める人には刺さりにくいかもしれません。
とはいえ、「日帰り〜小屋泊をこの一つでまかないたい」「雨ともそこそこ仲良くやっていきたい」という登山者には、長く付き合える頼れる相棒になってくれるはずです。