NEMO Tensor Eliteを登山で使ってみた結論
「軽さを優先すると、どうしても寝心地や静けさを犠牲にしてしまう」。登山用エアマット選びで、そんなジレンマを感じている方は多いのではないでしょうか。今回フィールドで使い倒してみたNEMO Tensor Eliteは、そのギャップをかなり小さくしてくれる存在でした。
この記事では、「NEMO Tensor Elite 登山 レビュー」をテーマに、北アルプスの氷点下テント泊で実際に試した感想を詳しくまとめています。静かなテント場で周りに気をつかいがちな「マットのカサカサ音」はどこまで抑えられているのか、本当にR値4クラスで氷点下の冷えに耐えられるのか、NeoAirなど定番ULマットと比べて寝心地はどう変わるのか。テント泊縦走で気になるポイントを、一つずつ検証しました。
「次の山行用に、そろそろマットをアップデートしたい」と考えている方の判断材料になればうれしいです。
NEMO Tensor Eliteを登山で使ってみた結論
NEMO Tensor Eliteは「静音性」と「断熱性」のバランスが非常に良く、軽量重視の登山者に合うマットです。春〜秋の縦走や、常時極寒ではない残雪期のテント泊で特に満足度が高く、「NEMO Tensor Elite 登山 レビュー」としては高評価といえます。
NEMOの中でも快適性に特化したプレミアムラインに位置づけられており、Therm-a-Rest NeoAirなど従来のULマットで「揺れ」「音」「寝心地」に不満を感じていた方には刺さる選択肢です。一方で、厳冬期の高所登山ではR値や耐パンク性の面で限界があり、使用シーンを絞ればコスパの良いマットという位置づけになります。
NEMO Tensor Eliteってどんなマット?
スペックと特徴
- 重量:レギュラーマミー 約240g
- 厚み:7.6cm(登山用として十分なクッション性)
- 構造:トラス/オフセット気室(面支持で揺れを抑える構造)
- 素材:静音性を高めた薄手10Dクラスナイロン
- 断熱:内部に複数層の反射フィルムを配置し、空気の対流を抑制
- バルブ:大口径のフラットバルブで素早く膨張・収束が可能
240gクラスでR値4前後、厚み7.6cmというスペックは、同クラスのULマットの中でも「寝心地寄り」に振った設計です。
旧Tensorシリーズや他社マットとの違い
旧Tensorは軽さ重視で、使用環境によっては「音」や「揺れ」が気になる場面がありました。Tensor Eliteでは内部構造と素材を見直し、静音性と安定感が向上しています。
内部トラス構造により、空気が一方向に動くような「浮き輪感」が抑えられ、面で支えられているような安定感があります。Therm-a-Rest NeoAir系と比べると音はかなり静かで、Sea to Summit系より沈み込みが少なく、R値は同等〜やや上という体感です。
素材は極薄ながらCORDURA系の耐久ナイロンを採用しており、重量あたりの強度バランスも良好です。
なぜ登山者のあいだで注目されているのか
UL志向でありながら「寝心地」を犠牲にしていない点が評価されています。約240gという軽さで7.6cmの厚みを持ち、睡眠の質を重視するテント泊縦走派に人気です。
近年は「軽量化は一巡して、いかに疲れを残さないか」という流れがあり、NeoAirやEther LightからTensor Eliteに乗り換える人も増えています。
- カサカサ音で同室者に気を使いたくない
- テント泊縦走で3〜4泊しても体がヘタらない
といったニーズに対し、重量・快適性・静音性のバランスがちょうど良いのが注目される理由です。
実際に使ったテスト環境
テスト環境と条件
- 標高:2,800m(北アルプス稜線・縦走中のテント場)
- 気温:夜間最低 -8〜-12℃、明け方 -6℃前後
- 地面:薄い新雪の下に凍土、風は夜間5〜15m/sの強風
- 寝袋:-10℃対応のダウンシュラフ(中綿多め)
- テント:3シーズン対応のダブルウォールテント、換気は通常運用
秋〜残雪期としてはやや厳しめのコンディションで、Tensor Eliteが想定している「3シーズン+残雪期」の上限に近い環境です。
静音性は本当に評判どおり?
室内比較:NeoAirとの音量差
同じ環境でNeoAirと比較すると、NeoAirは寝返りのたびに「カサカサ」とはっきりした音が出るのに対し、Tensor Eliteは「布が擦れる音」が小さく、体感で音量が半分ほどに抑えられていました。
内部の反射フィルムも静音仕様になっており、金属箔が擦れるような高音域のノイズがほとんどありません。そのため、マット全体から聞こえる音の「質」も柔らかく感じられます。
テント泊での実際:ソロと2人泊
ソロ使用では、音はほぼ気になりません。2人での使用時も、相手が頻繁に動くと多少の音はありますが、旧Tensorや他の軽量マットと比べると確実に静かです。
山小屋テント場のような「静寂+薄いテント生地」という状況でも、よほど神経質な方でなければ気にならないレベルに抑えられていました。
寝返り・起き上がり時の音
寝返り時はほとんど無音に近く、起き上がるときにわずかに擦れ音が出る程度です。あぐらをかいて座ったり、寝袋の中で姿勢を変えたりしても、「今マットが鳴った」と意識する回数はかなり少ない印象でした。
深夜のテント場・山小屋で気になるか
深夜の静かな環境でも、大きく気になるほどの音ではありません。同泊者に気兼ねするレベルは低く、山小屋のような狭いスペースに複数人が寝る場合でも、他人のマット音に紛れる/ほとんど気にならない程度の静音性です。
軽量マット特有のカサカサ音が気になっていた方にとっては、乗り換えメリットが大きいと感じました。
旧Tensorシリーズからの静音性の進化
素材と内部構造の改良により、「音の原因」がしっかり抑えられています。反射フィルムの枚数・配置・素材を見直したことで、従来は避けづらかった「アルミ箔のシャカシャカ音」が大幅に軽減され、Tensorシリーズの弱点だった「静かなテント場で音が目立つ問題」はほぼ解消された印象です。
氷点下での断熱性(R値相当)をフィールドで検証
テスト条件
- 標高・気温・地面:2,800m・-8〜-12℃・凍土+薄雪
- 使用装備:-10℃対応ダウン寝袋、3シーズンテント、ベースレイヤー+フリース
R値4クラスのマットと-10℃対応シュラフの組み合わせとしては、かなりリアルな登山環境です。
地面からの冷えはどこまで防げるか
地面から伝わる冷気はかなり軽減され、就寝直後〜深夜までは腰まわりの冷えをほとんど感じませんでした。凍結した地面に直置きでも、「じわじわ底冷えしてくる」感覚は弱く、地面側からの冷たさはしっかり抑えられている印象です。
足先は寝袋や靴下の状態に左右される部分も大きく、マットだけで零度以下の冷気を完全に遮断できるわけではありませんが、R値4クラスとして十分な働きでした。
夜間〜明け方の体感温度の変化
就寝直後はしっかりと暖かさが保たれ、明け方にかけて体感で1〜2℃程度冷え込む印象です。これは典型的な「R値4クラス」の特性で、深夜3〜4時ごろにやや冷えを感じはじめるものの、眠れないほどではありません。
気温-10℃前後であれば、寝袋とレイヤリングを適切に組み合わせることで、十分実用的な範囲に収まります。
冷えやすい部位ごとの体感
- 腰:マットの厚みと面支持構造のおかげで冷えにくく、腰骨が当たる感じも少ないため朝まで快適でした。
- 肩:上半身は寝袋の保温性が効いており、横向きでも冷えは気になりませんでした。
- 足先:もっとも冷えやすい部位で、靴下やカイロなどの追加対策があると安心です。Tensor Elite単体では「氷点下でも常にポカポカ」とまではいかないため、厳しめのコンディションでは工夫が必要です。
R値4クラスとしての実力と限界
体感としてはR値約4前後と評価できます。秋〜残雪期のテント泊には十分対応しますが、本格的な冬山(-20℃近く)や高所の厳冬期では心許なくなります。
特に-15〜-20℃級の環境ではTensor Elite単体では明らかに力不足で、クローズドセルマットとの二枚重ねなどの対策が前提になります。「3シーズン+肩シーズン(残雪期)の上限」あたりが現実的な運用レンジです。
季節ごとの適正シーズンまとめ
- 適正:春〜秋、残雪期の低〜中標高でのテント泊。氷点下前後〜-10℃程度までなら、寝袋との組み合わせ次第で問題なく使えます。
- 注意:真冬の高所登山や積雪の深いテン場では、より高いR値のマットを推奨します。特に、連泊で体力を温存したい厳冬期アルパインでは、上位の断熱マットや二枚敷きを検討したほうが安心です。
寝心地と安定感は「登山向け」か?
7.6cm厚のクッション性と体圧分散
7.6cmという厚みは山用マットとして十分で、地面の凹凸を感じにくく、長時間寝ても腰への負担が軽減されます。点ではなく面で支える構造のため、腰や肩など突出部への負荷が一点集中しにくく、体圧がうまく分散されていると感じました。
「ウレタンマット+薄めのエアマット」から乗り換えると、睡眠の質が明確に変わるレベルです。
横向き・うつ伏せ・あぐらなど体勢別の寝心地
横向きでも肩の沈み込みが適度で、床に肩が当たって痺れるようなことはありませんでした。うつ伏せでも腰が反りすぎず、あぐらや半座位でも安定感があります。
オートキャンプ用マットに比べると幅はやや細めですが、「山用としてはかなり快適寄り」の寝心地だと感じます。
体が左右に揺れにくい内部構造
内部トラス構造のおかげで、寝返り時の揺れが抑えられ、相手の動きが伝わりにくいです。一般的な横方向にチューブが連結したエアマットだと、片側に荷重をかけたときに反対側が「ボヨン」と持ち上がるような揺れが出ますが、Tensor Eliteではそれがかなり少なくなっています。
ダブルウォールテント内で2人が動いても、お互いへの揺れの影響は最小限に抑えられていました。
連泊で感じた疲労の違い
1泊目から疲労回復に貢献している実感があり、連泊では翌朝の腰痛や肩こりが明らかに軽減されました。北アルプスのようなアップダウンが続く縦走では、「3泊目以降にどれだけ体力を残せるか」がパフォーマンスに直結しますが、Tensor Eliteでは3泊しても体のダメージが蓄積しにくく、「軽量マット=我慢して寝るもの」というイメージが良い意味で覆されました。
登山での取り回し:重量・収納・設営/撤収
重量240gの体感
240gは非常に軽く、ザックに入れてもほとんど荷重感を覚えません。UL装備の一部として自然に組み込める重量です。
NeoAirの軽量モデルと同等かそれ以下の重さで、「この快適性でこの軽さ」という印象が強いです。水を250ml削るのと同程度と考えると、快適性のために追加する価値は十分あると感じました。
パック内での収まりと他ギアとの相性
コンパクトに巻けるため、寝袋やテントと干渉せずパッキングしやすいです。収納サイズは500mlペットボトルを一回り細長くした程度で、ザックのサイドポケットやテントポール横にも収まりやすく、NEMOの軽量テントをはじめとしたUL系コンパクトテントとの相性も良好です。
膨らませ方と所要時間
大口径フラットバルブのおかげで、数回の深呼吸(約30〜60秒)で実用的な硬さまで膨らませられます。ポンプサックを併用すれば、30秒程度で完了します。
フラットバルブは口を当てやすく、グローブをしたままでも開閉しやすいため、寒冷環境での運用にも向いていると感じました。
片付けやすさと撤収のストレス
バルブを全開にすると空気が一気に抜け、折りたたみもスムーズです。いったんざっくり丸めて空気を抜き、その後きれいに折りたたんで巻くだけで、付属のスタッフサックにすんなり収まります。
-10℃近い環境でもバルブが凍り付いて開閉できないといったトラブルはなく、撤収のストレスはほぼなしでした。
耐久性とトラブルリスク
氷点下での素材の硬さ変化
低温下ではやや素材が硬くなりますが、寝心地に大きな悪影響はありません。むしろ適度に張りが出ることで「ぺしゃっと潰れすぎない」ため、横向き時の肩まわりの支えがしっかりする印象でした。
-10℃程度では、極端にパリパリと硬くなる感じもなく、安心して使えます。
岩場や小石に対する強さ
10Dクラスの薄手素材のため、パンクリスクは一定程度あります。岩場やハイマツ帯ではグラウンドシートの併用をおすすめします。
分厚いカーキャンプ用マットのように雑に扱うことはできませんが、テント場の小石を手でざっと払うなど、基本的なケアをするだけでもパンクリスクはかなり減らせます。
実際の敷き方とパンク対策
- 薄手タープや軽量グラウンドシートをマット下に敷く
- 尖った石や枝は事前に取り除く
- 雪面では「踏み固め → シート → Tensor Elite」の順で敷き、冷気とパンク両方を軽減
予備のパッチキットは必携をおすすめします。Tensor Elite自体も一般的なULマットと同様、フィールドでの応急パッチが可能な構造です。
何シーズン使えそうか
使い方にもよりますが、通常の登山用途であれば2〜5シーズン程度は十分期待できます。アルプスのガレたテン場やゴロ石の多い稜線での直置きを繰り返すと、見えない細かなダメージが蓄積しやすく、寿命は短くなります。
「ULマットの中では標準〜やや上の耐久性だが、ラフな使い方前提の人向きではない」というイメージで捉えておくとよいと思います。
どんな登山スタイルに向いているか
相性がいいシーン
- テント泊縦走
- UL志向のソロ登山
- 春〜秋のアルプスでのテント泊
- 静かなテン場・山小屋で周囲に配慮したい山行
「体力を温存したい連泊+軽量装備」という条件下で、Tensor Eliteのメリットが最大限に生きます。
注意・不向きなシーン
- 厳冬期の高所登山(-20℃級)
- 岩肌への直置きが多く、雑な設営を繰り返しがちな初心者
- 荷物に余裕があり、あえてもっと分厚いマットでぐっすり眠りたいオートキャンプ主体の方
極寒・岩場・ラフな取り扱いが前提のスタイルでは、より分厚くてタフなモデルを選んだほうが安心です。
サイズ選びとおすすめの組み合わせ
レギュラーマミーは身長183cm前後までの一般的な登山者向けです。身長が高い方はロングサイズを選ぶと、足先の冷え対策にもなります。
- マット:Tensor Elite
- 寝袋:-10℃対応クラスのダウンシュラフ
- テント:3シーズン対応の軽量ダブルウォールテント
この組み合わせが最もバランスが良く、NEMOの軽量テント(Dagger、Ridgeなど)と合わせれば、同ブランド内で「UL快適セット」を組みやすくなります。
「NEMO Tensor Elite 登山 レビュー」としての総合評価
氷点下での断熱性
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 氷点下での断熱性 | 8 / 10 | R値4相当として、残雪期・秋山には十分。ただし極寒には別対策が必要。 |
| 静音性 | 9 / 10 | NeoAir系からの乗り換えで静かさの違いを即体感できるレベル。 |
氷点下での断熱については、R値4相当として多くの残雪期・秋山には十分対応できる性能です。ただし極寒環境には向きません。厳冬期はクローズドセルマットとの併用や、より高R値のモデルを選ぶのが無難です。
静音性
「ほぼ無音」に近く、夜間の寝返り音で他人を起こしにくいマットです。NeoAir系からの乗り換えであれば、静音性の違いはすぐに体感できると思います。
重量・価格・快適性のバランス
重量240gで快適性が高く、価格はプレミアム帯ですが、睡眠の質を重視する縦走者には費用対効果が高いマットです。同クラスのULマットと比べても、静音性と安定感に投資する価値は十分あると感じました。
おすすめしたい人/別モデルをすすめたい人
| タイプ | 向き・不向き |
|---|---|
| おすすめしたい人 |
|
| 別モデルが無難な人 |
|
NEMO Tensor Eliteは、「軽くて静か、しかもそれなりに暖かい」という、登山用エアマットの欲張りポイントをかなり高いレベルで両立している一枚だと感じました。
NeoAir系で気になりがちなカサカサ音はしっかり抑えられ、静かなテント場や山小屋でも周囲を気にせず寝返りを打てる静かさです。R値4クラスの断熱性も氷点下前後〜-10℃あたりまでなら実用範囲で、春〜秋+残雪期の多くの山行をカバーしてくれます。
一方で、-15〜-20℃級の厳冬期や、岩場に直置きしてガシガシ使うようなシーンには向いていません。あくまで「3シーズン+肩シーズンの快適・軽量マット」と割り切り、必要に応じてクローズドセルとの二枚敷きや、よりタフなマットと使い分ける前提で考えると扱いやすいです。
テント泊縦走で「もう少しよく眠りたい」「でもザック重量は増やしたくない」「カサカサ音から卒業したい」と感じている方にとって、Tensor Eliteは有力な候補になるはずです。次のマット選びで、軽量性と睡眠の質のバランスを見直したいときの参考にしてみてください。