マタドール「Freerain22」とは?基本スペックと特徴
Freerain22のスペック概要(容量・重量・素材)
Freerain22は、アメリカ発のUL(ウルトラライト)系ブランド「Matador(マタドール)」が展開する、防水パッカブルバックパックです。登山やハイキングなどアウトドア用途をメインに設計されていて、ざっくりとした特徴は次のとおりです。
- 容量:22L
- 重量:430g前後(公称値ベース。実測でも400g台前半の個体が多い)
- 素材:
- メイン:70D Robic®ナイロン + UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)補強リップストップ
- 内側:50Dナイロンミニリップストップ + UTS(Ultra Tear Strength)コーティング
- 構造:ロールトップ式、全縫い目シームテープ、YKK防水ジッパー
- 背面:メッシュバックパネル
- 機能:チェストストラップ、サイドコンプレッション、サイドポケット、パッカブルポーチ
Robicナイロンは、もともと軍用ベストやパック向けに開発された高強度生地で、そこにUHMWPE(ダイニーマ系の超高強度繊維)がリップストップとして織り込まれています。「薄いのに裂けにくい」構造で、岩や枝に当たりやすい環境でも、軽量ザックとしてはかなり安心感があります。
内側のUTSコーティングは、従来のPUコーティングよりも高い引き裂き強度を出すための処理で、軽量ながら防水性・耐久性を両立させた設計です。一般的な「撥水生地+レインカバー」の日帰りザックとは思想が大きく異なり、「本体そのものをドライバッグに寄せる」というのがFreerain22の出発点になっています。
「防水ドライバッグ」と「軽量登山ザック」を組み合わせたような仕様で、雨対策をしつつ、山で丸一日背負えるレベルの背負い心地やストラップ類を備えているのがポイントです。
どんな登山スタイルに向いているバックパックか
スペックから考えると、Freerain22がフィットしやすい登山スタイルは次のとおりです。
- 雨が読めない日の日帰り登山
- 1泊小屋泊で「サブザック」や「行動用ザック」が欲しいとき
- 荷物を極力削るUL志向ハイカーの雨対策用パック
- 海外遠征や旅行時に、スーツケースに忍ばせておく折りたたみ登山ザック
アメリカのロングトレイルでは、「ベースパック(大容量ザック)」とは別に、雨が多いセクションや街〜トレイル間の移動で使う“第2のパック”として選ばれているケースが多く、日本でも同じような使い方がしっくりきます。
一方で、テント泊で何日も歩くメインザックとして使うには心もとないです。耐荷重的には10〜12kgほどまでに抑えたい印象で、20kgを背負うような使い方は想定外だと考えておいたほうが安心です。UL系のサブパックとして割り切ると、設計思想と実際の使用感がうまく噛み合います。
「パッカブル防水バックパック」と一般的な登山ザックとの違い
普通の登山ザックとの一番の違いは、「完全防水寄りの設計」と「パッカブル(折りたたんでポーチに収納できる)」という2点です。
| 項目 | 一般的な日帰りザック | Matador Freerain22 |
|---|---|---|
| 雨対策 | 撥水生地 + レインカバーで対応 | PU防水コーティング + シームテープ + ロールトップでドライバッグ寄り |
| 背負い心地 | 背面フレームや厚めのパッドで快適性重視 | 背面・ショルダーのパッドは最小限(軽量優先) |
| パッカブル性 | パッカブル仕様ではないことが多い | くるくる畳んで専用ポーチに収納可能 |
| 位置づけ | 1本でオールラウンドに使うメインザック | サブザックにできる軽さで、山で丸一日も背負える中間的なザック |
Sea to SummitのUltra-Sil Dry Day Packのような超軽量パッカブルドライパックと比べると、Freerain22は100〜150gほど重くなる代わりに、
- ショルダーの厚み・幅がしっかりしている
- 背面メッシュパネルで、背中にビニール袋を貼り付けたような不快感が少ない
- サイドコンプレッションやチェストストラップなど、登山ザックとして必要なディテールが揃っている
といった違いがあります。
一言でいえば、「快適性よりも、防水性と軽さと収納性を優先した登山ザック」です。この優先順位をどう評価するかが、このザックの向き・不向きに直結してきます。
購入した理由と選んだ背景
Freerain22を選んだシチュエーション
Freerain22を購入したきっかけは、「雨予報だけど、どうしても山に行きたい日」が続いたことでした。
- 普段使っている日帰りザック(30Lクラス)はレインカバー付き
- とはいえ、横殴りの雨や長時間の悪天が続くと、中の荷物がじわじわ湿ってくる
- ゴアテックスのレインウェアやダウンは絶対に濡らしたくない
このあたりにストレスを感じていて、「レインカバー前提ではなく、ザック自体が防水で軽いものが欲しい」と探し始めました。
さらに、「遠征で飛行機に乗るとき、スーツケースの中にサブザックを忍ばせたい」というニーズもあったため、パッカブルであることも重要な条件でした。UL系ブランドのギアを色々と比較する中で、
- “完全ドライバッグ”は背負い心地が犠牲になりがち
- “登山用バックパック”は防水性能が中途半端
という中間をうまく埋めてくれそうだったのがFreerain22でした。
比較検討したモデルとFreerain22の違い
比較検討した主なモデルは次のとおりです。
- モンベル
- U.L.デイパックシリーズ(軽いが防水ではない)
- レインダンサー パックカバー + 通常ザックの組み合わせ
- Sea to Summit(シートゥサミット)
- Ultra-Sil Dry Day Pack(超軽量の防水パッカブルザック)
- Ospreyのウルトラライト系パック(非防水)
比較して感じた点は次のとおりです。
- モンベル:背負い心地は良さそうだが、「撥水 + レインカバー」発想で、本体自体は防水ではない
- Sea to Summit:非常に軽いがショルダーが細く、「登山中に背負いっぱなし」にするには少し不安
- OspreyのULパック:作りは良いがほぼ非防水で、「ザックカバー前提」の設計
- Matador Freerain22:
- 防水寄りの設計
- ショルダーハーネスやチェストストラップなど、登山ザックとしての構造がしっかり
- UHMWPE補強入りで、薄手ナイロン単体よりも岩・枝への安心感が高い
このバランスから、「雨の行動用ザック」として最もイメージに合ったのがFreerain22でした。
「マタドール Freerain22 登山 レビュー」が少なかった話
購入前に「マタドール Freerain22 登山 レビュー」でかなり検索しましたが、日本語での詳細な登山レビューはほとんど見つかりませんでした。海外レビューは多いものの、トレイル文化や気候が異なるため、自分の登山スタイルにそのまま当てはめるのは難しいと感じました。
メーカー直販サイトやミリタリーショップ(WAIPERなど)の商品ページでは、スペックや素材について詳しく書かれている一方で、「実際に日本の低山〜アルプスで使ってどうだったか」という生の情報は少ない印象でした。
最終的には「自分で雨の山に持ち出して、人柱になるしかない」と考え、購入に踏み切ったというのが正直なところです。
開封&ディテールチェック
畳んだ状態のサイズ感と収納方法
届いてまず驚いたのは、「本当にこれで22L入るのか?」というほどのコンパクトさです。
- 畳んだ状態のサイズ感:厚手の文庫本〜500mlペットボトルを一回り大きくした程度
- 重さ:手に持つと拍子抜けするくらい軽い
収納方法はシンプルです。
- ザック本体をペタンと潰す
- 縦方向にくるくる丸める
- 付属の収納ポーチに押し込む
生地は70Dクラスなので、「極薄シャカシャカ生地」というよりは、ある程度コシがあって扱いやすい厚みです。これのおかげで、パッキングも収納もそれほど気を遣わずに済みます。
最初は戻し方に少しコツがいりますが、慣れれば1〜2分で畳めるようになります。「雨が止んだらサッと畳んで大ザックに放り込む」という使い方も現実的です。
展開したときの見た目と背負い心地の第一印象
展開してみると、「ちゃんとした登山ザックだ」と安心しました。
- 背面にメッシュパネル
- 細身ながらクッション入りのショルダーハーネス
- 高さ調整可能なチェストストラップ
- サイドコンプレッションとボトルポケット
ショルダーの付け根やロールトップ基部の縫製は、軽量ザックにありがちな“ギリギリの簡略化”ではなく、要所は二重縫い+テープ補強が入っていて、「10kg弱までなら怖くない」と感じる作りです。
背負い心地のファーストインプレッションは次のとおりです。
- 荷物が少ないうちは軽快で、肩に食い込む感じは少ない
- 背面フレームがないため、フレーム入り30Lザックと比べるとフィット感は「布を背負っている」感覚に近い
- それでも、一般的なパッカブルドライバッグよりは明らかに背負いやすい
ロールトップ構造・防水ジッパー・ストラップ類
防水まわりのディテールはかなりしっかりしています。
- メインアクセス:ロールトップ + サイドバックル
- 縫い目:すべてシームテープ処理
- 外部ジッパー:YKKの止水ジッパー
- ストラップ類:
- チェストストラップは高さ調整可能
- サイドコンプレッションで荷物の揺れを抑えられる
ロールトップの巻き込み部分には補強テープが入っており、クシャッと潰れ過ぎず、雨の侵入を防ぎやすい形をキープしてくれます。
「単なるナイロン巾着」ではなく、「登山用にチューニングされたドライバッグ」といった印象の作りです。
雨の登山での実地検証
テストした山とコース(標高・行動時間)
検証に使ったのは、関東近郊の標高1,500mクラスの山の日帰りコースです。
- 標高差:約700m
- 行動時間:休憩込み約6時間(登り3時間、下り2時間+アルファ)
- コース状況:前日までの雨でぬかるみ多め、樹林帯メイン・一部稜線あり
「典型的な雨の低山ハイク」といったコンディションで、防水性能と使い勝手を試すにはちょうどいい条件でした。海外レビューでも「Appalachian Trailの雨セクションで3日使っても中身は濡れなかった」といった声があり、日本の1日ハイクはまさに守備範囲ど真ん中といえます。
当日の天気・雨量・気温など
- 天気予報:終日くもり時々雨 → 実際はほぼ終日雨
- 降水量:1〜4mm/h程度(時々強まる)
- 気温:山頂付近で10〜13℃前後
- 風:稜線で時々強め(体感温度はかなり低め)
「土砂降りの暴風」とまではいきませんが、
- 樹林帯内ではしっとり濡れ続ける
- 稜線では横殴り気味の雨
という、装備の防水性をチェックするには十分シビアな条件でした。
持っていった装備とパッキング内容
Freerain22に入れた装備は次のとおりです。
- レインウェア上下(ゴアテックス)
- 化繊インサレーションジャケット(休憩用)
- 薄手フリース
- 行動食・昼食
- 500mlボトル2本
- ファーストエイドキット
- タオル・替えの手袋
- 防水ケース入りスマホ・鍵類
総重量はおおよそ5〜6kg程度で、Freerain22の想定範囲内。「普通の雨の低山日帰りフル装備」といったバランスです。
「本当に防水?」の検証結果
豪雨&長時間行動で中身は濡れたか
結論として、メインコンパートメント内の荷物はほぼ完全にドライな状態をキープしていました。
- 6時間行動(ほぼ全行程で雨)
- レインウェアを着っぱなし
- ロールトップは3〜4回巻いてバックルを固定
下山後に、
- インサレーションジャケット
- フリース
- 行動食のパッケージ
などを確認しましたが、「湿気でほんのりしっとり」程度で、雨水の侵入による濡れは感じませんでした。
レインカバー付きの一般的なザックだと、「ザックの底のほうがうっすら濡れる」ことがよくありますが、Freerain22ではそれがありませんでした。海外レビューの「台風接近の雨登山でも中身は無傷」「3日間の豪雨セクションでも寝袋は完全ドライ」といった評価と、実際の印象が一致しています。
ロールトップとシームテープの防水性
ロールトップは、次の基本を守れば雨の侵入はほぼ感じませんでした。
- 上端をきっちり合わせる
- 最低3回は折り返す
- サイドバックルをややきつめに留める
シームテープも浮きや剥がれはなく、ステッチの隙間から水が入った形跡は見られませんでした。
一部の「防水ザック」と謳うモデルの中には、コストダウンで一部しかシーム処理していないものや、トップの絞り部分から侵入しやすいものもありますが、Freerain22はメインの縫い目がしっかりテーピングされていて、「防水パック」としての作りはかなり真面目です。
サイドポケットや外付け部分の濡れ具合
外側のパーツに関しては、さすがに「完全防水」とはいきません。
- サイドポケット(メッシュ):
- 水抜け前提の構造なので、ボトルをそのまま入れておくと雨でびしょ濡れになります
- 外付け用デイジーチェーンやストラップ:
- 雨を吸ってしっかり濡れます
- サイドジッパー付きポケット:
- 止水ジッパーのおかげで大きな浸水はなく、「じわじわ染みた」感じもほとんどなし
- とはいえ、「絶対に濡らしたくないもの」を入れる場所としては不安が残るので、貴重品は防水ケースに入れてメインコンパートメントに収納するほうが安心
「外側に出したものは濡れる前提」で、濡らしたくないものはロールトップ内にすべて入れる、という運用が現実的です。
防水性で注意したいポイント
気になった点もいくつかあります。
- 生地自体は防水でも、長年使ってPUコーティングが劣化したときの挙動は未知数
- 軽量PUコーティングは、2〜3年のハードユースで劣化が始まることが多いので、永続的な完全防水と過信しないほうが良いです
- ロールトップの巻きが甘いと、トップの隙間から雨が入る可能性がある
- 側面の縫製部分もシームテープでカバーされていますが、ザックごと水没させるようなシチュエーションではさすがに限界があるはず
そのため、
- 長時間の土砂降りや沢での使用では、中身もドライバッグやジップロックで二重防水しておくと安心
- ロールトップは「最低3回巻く」を徹底する
この2点を意識しておけば、「雨の登山で困ることはほぼないレベルの防水性能」と言ってよいと感じました。
登山での使い勝手レビュー
背負い心地:ショルダーハーネスとチェストストラップ
背負い心地は、「パッカブルザックとしてはかなり良い」「フレーム入りザックと比べると一歩劣る」という中間的な印象です。
- ショルダーハーネス
- 厚すぎず薄すぎずのフォーム入りで、5〜6kg程度なら肩への食い込みは少ないです
- UHMWPE補強による本体生地のコシのおかげで、ショルダー基部がヨレにくいです
- チェストストラップ
- 高さ調整ができるので体格に合わせやすいです
- 雨でウェアが滑りやすい状況でも、ザックのブレを軽減してくれます
腰ベルトは事実上ないに等しく、「腰で荷重を受ける」感覚はあまりありません。その分、上半身でひょいっと担ぐ感覚になり、ライトウェイトな行動には合っています。10kgを超えてくると肩にずっしり来るので、「日帰り軽装+雨装備」あたりが快適に使える上限と感じました。
通気性と蒸れ:背面メッシュパネルの効果
背面にはメッシュパネルが入っていますが、グレゴリーなどの本格的なエアフローバックシステムのように、背面が大きく浮く構造ではありません。
- 樹林帯での登りでは、レインウェアを着ていることもあり、それなりに背中は蒸れます
- ただし、単純なナイロン一枚もののドライバッグと比べると、メッシュのおかげで不快感はかなり軽減されます
モンベルやグレゴリーの通気フレームパックと比較すると、「通気性は劣るが、防水と軽さは圧倒的に優位」という関係です。
22Lという容量は日帰り登山で足りるか
雨の低山〜中級山域の日帰りなら、22Lは「ちょうどいい〜やや余裕あり」という印象でした。
- レインウェア
- 予備の保温着1枚
- 行動食 + 昼食
- 水1〜1.5L
- ファーストエイド・小物類
この程度であれば、ロールトップをそれなりに余裕を持って閉められます。
ロールトップ構造のおかげで、荷物が少ないときはしっかり巻いて15Lほどの体積感になり、逆に荷物がやや増えたときはロール回数を減らして上方向に少し逃がせる、という“可変容量”も便利です。
ただし、次のようなシーンでは22Lでは厳しくなってきます。
- 冬季の日帰り(防寒着が増える)
- 子ども連れで荷物が多い
- カメラやレンズなどの写真装備がかさばる
これらの場合は、より大きな容量のザックを選んだほうが安心です。
取り出しやすさとパッキングのしやすさ
ロールトップ式のため、頻繁に出し入れする物の配置には少し工夫が必要です。
- よく使うもの:サイドジッパー付きポケットや、メインコンパートメントの上のほう
- あまり触らないもの(予備着やダウン):底側
このように、パッキングの段階で取り出す順番を意識しておくと快適に使えます。
メイン開口部は大きく開くので、
- 雨の合間にサッと広げて出し入れする
- 帰宅後の荷物の出し入れ
などはやりやすいです。内側も50Dミニリップストップで引っかかりが少なく、スタッフバッグ類の出し入れでストレスを感じることはありませんでした。
軽さとパッカブル性をどう活かすか
手のひらサイズ収納の実際のボリューム感
「手のひらサイズ」とはいっても、実際には「やや大きめの握りこぶし〜500mlボトル」ほどのボリューム感があります。それでも、
- 通常のザックに1つ入れておいても、ほとんど荷物の邪魔にならない
- スーツケースや旅行バッグにも気兼ねなく収納できる
というレベルのコンパクトさです。
収納ポーチにはループが付いているので、スーツケース内部のループやバッグインバッグにカラビナで吊るしておくなど、携行方法の自由度もあります。
サブザックとしての使い方(縦走・遠征登山・旅行)
特に便利だと感じたのは次のような使い方です。
- アルプスの山小屋泊での稜線散歩用サブザック
- 遠征登山で、移動日はスーツケース、本番はFreerain22で行動
- 海外旅行で、「観光の日」と「トレッキングの日」の両方に対応させる
海外のロングトレイルでは、ベースパック+サブパックの二段構えが一般的になりつつあり、その流れが日本にも入ってきている印象です。Freerain22はその“サブ”の役割をしっかりこなしつつ、状況次第では単独でメインにも格上げできる、中庸なポジションにいます。
大きなメインザックとは別に、「軽くて防水性の高い行動用パック」を持ちたい人にはかなり刺さるモデルだと思います。
「常にザックに入れておく雨対応ギア」としての価値
普段使っているメインザックに、
- レインウェア
- 防水スタッフバッグ
- Freerain22
をひとまとめにして入れておけば、「今日は天気が怪しい」と思ったときに、Freerain22をメインとして使うか、既存ザックのサブとして使うか、その場で選択できます。
特に北アルプス縦走などで、「ベースは60L前後の大ザックだが、山小屋からご来光ピストンに行くときは軽く動きたい」といったシーンでは、400g台の防水サブザックはかなり重宝します。
「ザックそのものが雨対策ギア」という発想で持てるのは、他の装備では代替しにくいメリットです。
耐久性チェック:岩場・藪こぎ・擦れへの強さ
UHMWPE強化リップストップ生地の実力
Freerain22の生地は、70D Robic®ナイロンにUHMWPE繊維を織り込んだリップストップです。ダイニーマ系の強度アップ繊維を入れた薄手ナイロンといったイメージです。
- 枝や低木に擦った程度では、傷やほつれは確認できませんでした
- 岩に軽くこすった程度でも、目立ったダメージはなし
Robic+UHMWPEの組み合わせは、近年のULザックでも「少しタフ寄り」のカテゴリとしてよく採用されており、「毎週末テント泊フル装備を担ぐ」といったヘビーな使い方でなければ、かなり安心してガシガシ使える素材です。
「極薄ウィンドシェル生地」のような頼りなさはなく、軽量ザックとしては十分にタフな印象でした。
1日の登山でのキズ・擦れの状態
テスト登山後に全体をチェックしたところ、状態は次のとおりでした。
- 底面:汚れはあるものの、生地の毛羽立ちや破れはなし
- ショルダーストラップの付け根:異常なし
- ロールトップの折り曲げ部分:折りジワはついたが、コーティングの剥離などは見当たらず
軽量ザックの弱点になりやすい「ボトムの擦れ」や「ショルダー根本のステッチ飛び」は、1日使用では全く見られませんでした。1回の山行後としては「新品同様」といって差し支えない状態でした。
想定できる弱点と長く使うための扱い方
とはいえ、430g前後のパッカブルザックであることを考えると、
- 大きな岩に何度もこすりつける
- 15kg以上の荷物を詰めて担ぎ続ける
- 地面に引きずる
といった使い方では、どこかで限界が来ると考えておいたほうが良いです。
ULコミュニティの情報でも、「20kg近く詰めてストラップが抜けた」「2年酷使したらコーティングが剥がれた」といった事例はゼロではありません。設計上の許容ラインを大きく超える使い方は避けたほうが無難です。
長く使うためには、
- 荷物は10〜12kg程度までを目安にする
- 岩場ではザックを体から離して擦らないよう意識する
- 帰宅後に泥汚れを落とし、直射日光を避けて乾燥させてから保管する
このあたりを守れば、軽量ザックとしては十分な寿命が期待できると感じました。
向いている登山スタイル・向かない登山スタイル
Freerain22がハマるシーン
実際に使ってみて、「特にハマる」と感じたシーンは次のとおりです。
- 雨または不安定な天候の低山〜中級山域の日帰り登山
- 夏〜秋のアルプス日帰り山行(荷物を絞ったUL寄りスタイル)
- 北アルプス縦走などでのサブザック(行動用・ご来光ハイク用)
- 海外や地方への遠征登山と観光を組み合わせる旅
アメリカのロングトレイルハイカーの中には、「3日間の雨セクションはFreerain22だけで切り抜けた」というレビューもあるほどで、雨天行動が多い人ほどありがたみが増すパックです。
「軽さ」「防水」「パッカブル性」を活かせるシーンでは、とても頼りになるギアだと感じました。
おすすめしない使い方(重装備・テント泊縦走など)
逆に「これは向かない」と感じた使い方もあります。
- テント泊縦走でのメインザック(荷物が重くなりがち)
- 冬山・積雪期の本格登山用メインパック
- 20kg近い重量を日常的に背負うトレーニング用途
こういった用途では、
- フレームや厚いパッドを持つ専用のザック
- よりタフな生地・縫製のモデル
を選んだほうが確実に快適です。
「初めての登山ザック」としてアリかナシか
「これから登山を始めるけれど、最初の1つとしてFreerain22を選ぶべきか?」という視点では次のように感じました。
- 「雨の日も登る予定」「UL寄りの装備が好き」「サブザック用途も想定している」→ アリ
- 「まずは標準的な30L前後のしっかりしたザックが欲しい」→ 先に一般的なザックをおすすめ
ブランド自体もUL寄り・トラベル寄りのニッチな立ち位置なので、モンベルやグレゴリーのような“王道の初めてザック”というより、「スタイルが固まってきた2本目、3本目」の選択肢に近い存在です。
1本目としては少し玄人好みな選択肢なので、「2本目以降の“雨に強い軽量サブ”」として導入するのがベストという印象です。
他の人気モデルとの比較
モンベル・グレゴリーなど一般的な日帰りザックとの比較
モンベルやグレゴリーの一般的な日帰りザックと比較すると、ざっくり次のようにまとめられます。
| 比較ポイント | 一般的な日帰りザック | Matador Freerain22 |
|---|---|---|
| 背負い心地・快適性 | ◎ | ◯(パッカブルとしては良好) |
| 防水性(レインカバーなし) | △〜◯ | ◎(ドライバッグ寄り) |
| 軽さ・パッカブル性 | △ | ◎ |
| 重荷での荷重分散 | ◎ | △(10〜12kgまで推奨) |
「1つのザックでオールマイティにこなしたい」なら一般ザック、
「防水と軽さに特化した2本目が欲しい」ならFreerain22、という棲み分けになります。
他ブランドの防水パッカブルザックとの比較
シートゥサミットなど、他社の防水パッカブルザックと比べると次のような違いがあります。
- とにかく軽さ最優先(例:Sea to Summit Ultra-Sil Dry Day Pack)
- 重量はさらに軽いが、ショルダーが頼りなく、登山中の長時間使用には不安
- Freerain22
- Ultra-Sil系よりやや重いものの、そのぶんショルダーや背面が「登山向き」に設計されている
- UHMWPE補強により耐久性も一段上
価格的にもUltra-Sil系よりは高く、Hyperlite Mountain GearのようなフルDyneemaパックよりは安い、中堅〜プレミアムクラスといったポジションです。
「パッカブル防水ザックの中で、登山での実用性と耐久性のバランスが良いモデル」という位置付けに感じました。
価格と性能のバランス
国内販売価格はおおよそ17,000〜18,000円前後です。通常のデイパックよりは高めですが、UL系プレミアムザックと比べると中〜やや高めといった印象です。
- 「サブザックにこの価格は高い」と感じるか
- 「メインにもなりうる防水パッカブルザックなら投資する価値がある」と感じるか
は、登山の頻度やスタイルによって評価が分かれるところです。
個人的には、
- 雨に対する安心感
- サブとしてもメインとしても使える汎用性
- マニアックすぎない範囲で、壊れにくい軽量ギアとしてのバランスの良さ
を考えると、「高いけれど、役割がはっきりしている装備」として納得できる価格帯だと感じました。
実際に使って感じたメリット・デメリット
買ってよかったと感じたポイント
- 雨の中を6時間歩いても、中身がほぼ完全にドライだった防水性能
- 430g前後という軽さと高いパッカブル性
- 防水パッカブルでありながら、ショルダーやチェストストラップがしっかりしていて登山中も背負いやすい
- UHMWPE補強入りの生地で、「軽いのに岩や枝にもそこそこ強い」という安心感
- 「雨予報だけど山に行きたい日」に、迷わず選べる存在になったこと
惜しいと感じた点・改善してほしい点
- 背面の通気性は、フレーム入りザックには及ばない
- 腰ベルト的な荷重分散機構がほぼないため、10kgを超えると肩への負担が大きい
- PUコーティングの宿命として、数年後の防水劣化リスクは避けられない
- 価格がもう少し抑えられていれば、「初めての1本」としても勧めやすい
「マタドール Freerain22 登山 レビュー」を探している人へのアドバイス
Freerain22をおすすめできるのは、次のようなタイプの方です。
- 雨の山にもよく行く、もしくは「天気が怪しくても予定を中止にしたくない」方
- UL寄りの装備が好きで、軽くて機能的なギアに投資したい方
- アルプス縦走などで、サブザック兼雨対応ザックを探している方
- 旅行や遠征でも活躍するパッカブルな登山ザックが欲しい方
反対に、次のような方には、まず一般的なフレーム入り登山ザックをおすすめします。
- 1本目のオールラウンダーとしての登山ザックが欲しい方
- 荷物が重くなりがちなテント泊メインの方
- 背負い心地・通気性を最優先したい方
「雨の日の行動用ザック」として割り切って導入できる方にとって、Freerain22は満足度の高い防水パッカブルバックパックだと感じました。
まとめ:Freerain22は「レインカバー前提ザック」と「ドライバッグ」の中間解
Freerain22は、「レインカバー前提の一般的なザック」と「背負い心地を犠牲にしたドライバッグ」のちょうど中間あたりにいるバックパックだと感じました。430g前後で手のひらサイズに畳めるうえ、雨の中を6時間歩いても中身がほぼ濡れなかった防水性は、雨天の登山ではかなり心強いポイントです。
一方で、背面フレームや腰ベルトはなく、通気性も本格的な山岳ザックには及ばないので、重荷を長時間担ぐ用途やオールラウンドの「最初の1本」としては向きません。雨の低山〜夏山日帰り、アルプス縦走のサブザック、遠征や旅行先での行動用ザックといったシーンでこそ真価を発揮します。
「濡らしたくない荷物を守りつつ、軽快に動きたい日」に手を伸ばしたくなる、少しニッチだけれど使いどころがハマる1本でした。