ノースフェイス「ライトヒート」との出会い:レイヤリング迷子からの卒業
冬〜春の山に通うたび、「ノースフェイス Light Heat は登山のミドルレイヤーとして本当に使えるのか?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。フリースだと歩き出してすぐ暑くなり、汗冷えが怖い。一方でダウンは休憩中こそ最強なのに、行動中はオーバーヒートしがちで、結局ザックの中で眠ったまま──そんなレイヤリング迷子だった私が、ショップですすめられて手に取ったのが「ノースフェイス Light Heat」シリーズでした。
この記事では、実際の登山で何度も着回したうえで感じた、ライトヒートジャケットのリアルな使い心地をレビューしていきます。薄手なのにしっかり温かい理由、冬〜春の行動着としての実力、バルトロライトやモンベル・パタゴニアなど他ブランドとの違い、そして気になった弱点まで、登山目線で率直にまとめました。「次の一枚」を探している方のヒントになればうれしいです。
冬〜春の登山になると、毎回のように悩んでいたのが「ミドルレイヤーを何にするか」でした。
フリースだと動くと暑すぎて汗冷えするし、ダウンだと行動中は熱がこもってしまう。でも、休憩中や山頂の風はしっかり防ぎたい──。
そんな「レイヤリング迷子」の状態から抜け出すきっかけになったのが、ノースフェイスのライトヒートジャケットでした。
この記事では、実際に登山で使い倒してみてわかった「薄いのに、なぜこんなに温かいのか?」という仕組みと、メリット・デメリット、他ブランドとの比較までを、率直なレビューとしてお伝えします。
「薄いのに温かい」は本当か?登山用ミドルレイヤー選びの悩み
登山用のミドルレイヤーを選ぶとき、多くの方がぶつかるのが次のような悩みではないでしょうか。
- 歩き出すとすぐ暑くて汗をかく
- でも休憩に入ると一気に冷えて寒い
- 防寒着がかさばってザックがパンパンになる
- 山だけでなく街でも着回せる一着が欲しい
私も例に漏れず、この4つにしっかり当てはまっていました。
フリースの「暑すぎ問題」と汗冷え
まずはフリース。
保温性は高いのですが、行動中に暑くなりやすく、汗をかきすぎることがよくありました。速乾性はあるものの、背中側はザックで押さえつけられているので乾ききらず、そのまま休憩に入ると「汗冷え」で一気に体が冷えてしまいます。
「ベースレイヤーを工夫すればいい」とも言われますが、真冬や標高の高い山になると、フリース一枚ではどうしても調整が難しく、「着る・脱ぐ」が多すぎてストレスになっていました。
ダウンの「行動中は暑い」「シェル必須」のジレンマ
次に軽量ダウン。
こちらはとにかく暖かくて、休憩中や山頂では最高です。ただ、行動中に着ているとすぐにオーバーヒート気味になり、結局ザックの中に入れたままということも少なくありません。
さらにダウンは、風に対しては強くても、雪や雨には弱いので、上からハードシェルを着る必要があります。ミドルレイヤー+シェルという二枚重ねになると、どうしても動きにくく、レイヤリングも複雑になりがちです。
「薄くて・軽くて・温かくて・かさばらない」が理想
そんな試行錯誤を続けるなかで、自分の中で固まってきた理想像がこちらです。
- 薄手で動きやすく、ミドルレイヤーとして使える
- 休憩中や山頂でもそこそこ暖かい
- パッカブルでザックの中でも邪魔にならない
- 小雨や雪くらいならシェルなしでも耐えられる
- タウンユースでも違和感のないデザイン
この条件を満たす一枚を探しているときに、ショップスタッフからすすめられたのが、ノースフェイスの「ライトヒート」シリーズでした。
Light Heatを選んだ理由:他ブランドと迷ったポイント
同じようなコンセプトの「薄くて軽いのに暖かい」ジャケットは、他ブランドからもたくさん出ています。
パタゴニアのマイクロ・パフ、モンベルのスペリオダウン、コロンビアの化繊インシュレーションなども候補に挙がりました。
それでも最終的に「ノースフェイス Light Heat」を選んだのには、明確な理由がいくつかあります。
1. 重量約205gという“羽のような軽さ”
まず驚いたのが、その軽さです。
モデルにもよりますが、ライトヒートジャケットはおおよそ205g前後(Mサイズ程度)と、スマホ1台ちょっと分くらいの重さしかありません。
ザックに入れても「入れたのを忘れる」レベルで、いわゆる「お守り防寒着」として常に持ち歩ける軽さです。
レイヤリングの自由度を高めたい登山では、この軽量性は大きなアドバンテージになります。
2. 光電子ダウンの“じんわり系”の暖かさ
ライトヒートの最大の特徴が、中綿に使われている「光電子PROダウン」です。
これは、人体から出る遠赤外線を吸収して再放射することで、体の芯からじんわりと温めてくれるダウン素材です。
一般的なダウンは「着た瞬間からふわっと暖かい」感覚がありますが、光電子ダウンはどちらかというと、
- 着た直後は軽いのに少し物足りない?
- 5〜10分ほど動いていると、じんわり体が温まってくる
- その暖かさが、行動中も無理なく持続する
という、非常に自然な暖かさを感じました。
「モコモコしているのに暑すぎる」ダウンとは違い、ライトヒートは薄手で、熱がこもりにくいのに冷えにくい──。
この“遠赤外線の輻射熱”のおかげで、「薄いのに温かい」が成り立っているのだと実感しました。
3. パーテックスカンタムナイロンの軽さと強さ
表地には、パーテックスカンタムといった高密度ナイロン素材が使われています。
これは極細の糸を高密度で織り上げた生地で、
- とても薄くてしなやか
- ダウンが抜けにくい
- ある程度の耐久性と撥水性がある
という特性を持っています。
実際、細い枝や岩に擦ってしまっても、すぐに破れたりすることはありませんでした(もちろん、藪漕ぎレベルになると注意は必要です)。
触り心地はサラッとしていて、ハードシェルやレインウェアの下に着てもゴワつきが少ない点も、ミドルレイヤーとして優秀です。
4. 撥水加工で「ちょい悪天」なら単体でもいける
ライトヒートは完全防水ではありませんが、表地には撥水加工が施されています。
小雨や湿った雪程度なら、短時間であればシェルなしでも十分耐えられました。
- 朝のガス混じりの小雨
- 冬晴れの稜線での飛雪
こうした「ちょい悪天」なら、ライトヒート単体でしのげる場面も多いです。
他モデル&他ブランドとの比較
同じノースフェイスのバルトロライトや他ダウンとの違い
「ノースフェイス Light Heat 登山 レビュー」という観点でよく聞かれるのが、
「バルトロライトと何が違うの?」「どっちを買えばいい?」という質問です。
結論からいうと、ライトヒートは「行動する時間が長い人向けの軽量インサレーション」、
バルトロライトは「止まっている時間が長い人向けの最強防寒着」というイメージです。
ノースフェイスの代表的なインサレーションを軸に、ざっくり整理してみます。
ライトヒートジャケット(Light Heat)
- 重量:約200g前後(メンズMの目安)
- 中綿:光電子PROダウン or 光電子インサレーション
- 生地:パーテックスカンタムなどの極薄・高密度ナイロン
- 位置づけ:軽量・行動着寄りミドルレイヤー
- 特徴:薄い・軽い・パッカブル。登山の行動中や、日常のレイヤリングに最適
バルトロライトジャケット(Baltro Light)
- 重量:約900g前後
- 中綿:光電子PROダウン+化繊インサレーション
- 生地:GORE-TEX WINDSTOPPERなど、防風性の高い素材
- 位置づけ:真冬のメインアウター、防寒用アウター
- 特徴:厚手・ゴツい・とにかく暖かい。厳冬期タウンユース〜雪山レベルの保温力
ヌプシジャケットや他ダウン(Nuptseなど)
- 重量:500〜700gクラスが多い
- 中綿:通常ダウン or 光電子ダウン
- 生地:リップストップナイロン+撥水加工
- 位置づけ:街〜ライトなアウトドア向けの中厚アウター
- 特徴:バルトロより軽いが、ライトヒートほどの携行性はない
ライトヒートとバルトロライトの一番の違いは、「役割」と「レイヤリングの前提」です。
- ライトヒートは、
- ベースレイヤー(メリノウールや化繊)
- + ライトヒート(インサレーション)
- + シェル(レインウェアやハードシェル)
という“3枚重ね”の真ん中で使うことが前提のアイテムです。
そのため「自前で防風・防水を完結させる」作りではなく、あくまで“断熱係”に徹しているイメージです。
- 一方バルトロライトは、
- ベースレイヤー
- + バルトロライト(これ1枚で防風+断熱+ある程度の撥水)
という“2枚重ね”でも成立するほど、アウターとして完成された構造です。
ですから、街着なら「Tシャツ+バルトロ」で真冬も余裕、という声が多くなります。
行動時の快適さという点では、ライトヒートに軍配が上がります。
- 軽くて肩がこらない
- 腕を振っても、生地が突っ張らない
- パーテックスカンタムのような薄い生地なので、シェルを上から着てもゴワつきにくい
登山中、「ちょっと肌寒いな」というタイミングでサッと着て、体が温まったらザックに突っ込んでおく――
この“オン・オフ”の切り替えがしやすいのがライトヒートです。
逆に、冬のバス待ちやナイター観戦のように「ほぼ動かない」シーンでは、
ライトヒートだと保温が物足りなくなることもあります。
その点、バルトロライトは「動かない前提」で作られているので、
室内に入ると暑すぎるくらいの保温力があります。
まとめると、
- バルトロライト=「マイナス気温で長時間じっとしていても耐えられる“鎧”」
- ライトヒート=「0〜10℃前後で動き続けるときにベストな“ミドルレイヤー”」
同じノースフェイスでも、まったく得意分野が違うモデルというわけです。
モンベル・パタゴニア・コロンビアの軽量インサレーションとの比較
「ノースフェイス Light Heat 登山 レビュー」を書くときに、
よく比較対象として名前が挙がるのが、以下のブランドです。
- モンベル(mont-bell)
- パタゴニア(Patagonia)
- コロンビア(Columbia)
それぞれの代表的な軽量インサレーションと、ライトヒートの違いを見ていきます。
1. モンベル:スペリオダウン/プラズマ1000など
モンベルは、国産ブランドならではの「コスパの良さ」と「軽量性」で知られています。
特にスペリオダウンジャケットやプラズマ1000シリーズは、
ライトヒートとよく比較される“軽量ダウンジャケット”です。
- モンベルの特徴
- とにかく軽い(150〜200g級が多い)
- 価格が比較的安い(1万円台後半〜2万円前後がメイン)
- 自社開発の高品質ダウン(800FP〜1000FP)を使用
- 日本人体型に合ったパターンで、動きやすさに定評あり
- ライトヒートとの違い
- ライトヒート:光電子ダウンという“+テクノロジー”込みの価格
- モンベル:純粋にダウンの質と軽量性にコストを寄せているイメージ
ライトヒートの「光電子ダウン」は、
体から出る遠赤外線を吸収して、じんわりと暖かさを維持するのが売りです。
体温がある程度ある状態で着続けると、「あれ、いつの間にかポカポカしてきた」という感覚になります。
一方、モンベルは遠赤外線などの“プラスアルファ機能”よりも、
ダウンそのもののフィルパワーと軽量な生地で勝負している印象です。
そのため、
- 価格をできるだけ抑えたい
- シンプルに軽くて暖かいダウンが欲しい
という人にはモンベルが強く刺さります。
ただ、レイヤリングのなかで「薄手で扱いやすいインサレーション」として使う場合、
- ライトヒート:ややタイトめなカッティング+光電子による“持続的な暖かさ”
- モンベル:軽さとふくらみで“瞬間的な暖かさ”
というキャラクターの違いが出やすいです。
(※パタゴニア、コロンビアとの比較は、この記事ではここまでの記述となっています)
ライトヒートを山で着回して感じたこと:まとめ
ライトヒートを何度も山で着回してみて感じたのは、「厚み=暖かさ」ではないということでした。フリースのように汗だくにならず、かといって軽量ダウンのようにオーバースペックにもなりにくい、ちょうどいい“間”をとってくれる存在です。
光電子ダウンのじんわりと続く保温感、パーテックスカンタムの軽さと強さ、小雨や飛雪をやり過ごせる撥水性。そのおかげで、「歩く・止まる・また歩く」という登山のリズムにうまく寄り添ってくれました。
もちろん、真冬の停滞や厳寒の街歩きではバルトロライトのようなヘビーアウターに軍配が上がりますし、価格面だけならモンベルの方が魅力的に映る場面もあります。それでも、0〜10℃前後の山で動き続ける日や、街と山を一着で行き来したいとき、「あ、今日もライトヒートでいいや」と素直に手が伸びる。
レイヤリングで迷いがちだった冬〜春の山行が、少し気楽になったのはこの一枚を取り入れてからでした。次のミドルレイヤー選びで悩んでいる方は、候補のひとつとして試着してみる価値はあると思います。